化学工学基礎 Bデータの取り扱い


3.1 エンジニアの仕事とは

工学の仕事は目的・装置設計・装置作成・実験の実施・データ解析・ モデル解析 間の循環でなりたつ.

3.2 ケミカルエンジニアの情報処理

・個人における情報処理  講義・本・雑誌等目の前を通り過ぎて 行く情報をいかに整理していざというときに引き出せるか。このこ とは情報化時代のエンジニアにとって常につきまとう課題である。 とりあえずは,紙の大きさをA4にそろえる,パンチを買って資料 をファイルする,ここから始めよう。
・情報収集の方法  実験は装置・費用が必要ですぐ始めるわけに はいかないが,情報収集は足と目とヒマさえあればすぐできる。例 えば「これから酢酸とエタノールを分離するプロセスを開発したい ので既往の分離技術を調査してくれ」という課題が与えられたとす る。
 まずモノの調査をおこなう.酢酸・エタノールの純成分・混合物 の物性値の調査および推算である.調査対象は,理化学事典・化学 事典・応用化学便覧・化学工学便覧・化学工学物性定数・Iternational Critical Tablesなど.

 ついで既往の技術,研究の調査をおこなう.先ずは便覧類で基礎 知識を得る.化学工学便覧・ Chemical Engineers' Handbook(Perry のハンドブック 等を参照する.
【良いレビューを見つけると話しが早い】 「化学工学」「化学と 工業」「ケミカル・エンジニアリング」等論文誌以外の商業雑誌。最近は会社向 けに高額な専門関係のレビュー本が多数出ている。
【その方面の専門家に話しを聞くのが一番】 学会の要旨集を調べ て国内における専門家を知る。しかし他人にタダで価値ある情報を 教えるひとはいないわけで実際は難しい。せいぜい当大学当学科の 教官の専門を知っておき,機会あれば利用すべし。
【文献抄録誌で探すのが普通】 「Chemical Abstruct」(データベース の代名詞)「科学技術文献速報」。キイワードをたよりに4年分,100 冊ぐらい1週間がかりで目を通せばいくつか見つかるだろう。
【オリジナル文献を入手】 文献のコピーを自分のファイルにいれ, 辞書片手に読む。セミナーで他人に紹介してみるのがよい.(4年 生の研究室におけるセミナーである.)ここまでしないと実際に役 立つ情報は得られない。その引用文献をさらに探すのが方法が効率 が良い.
 レビューを2つ,オリジナル文献を10報集めて読めば君もその 限定された分野の専門家である。晴れて研究がスタートできる。

3.3 ケミカルエンジニアが使う道具

・ケミカルエンジニアが使う道具

(場面) 物性値(推算) 実験・測定 モデル解析
(仕事例) データベース操作
推算法
データ処理
相関式作成
グラフ作成
モデルシミュレーション
(道具) 表計算
非線形方程式
数値積分
表計算
最小二乗法
数値微分積分
非線形方程式(1変数)
連立非線形方程式
常微分方程式
偏微分方程式(FEM等)


                  ・集計用紙から表計算ソフトの時代へ→シミュレーションの道具としての

表計算ソフト (例)Table 3拡散係数 計算シ−ト

FORTRAN,BASICから方程式解法ソフトの時代へ

3.4 グラフとプレゼンテーション

現代はプレゼンテーションの時代。どんなよい企画も上手にプレゼンテーション できなければ実現されないし,どんなに良い仕事も上手にプレゼンテー ションできなければ評価されない。エンジニアも表現の技術が重要な資 質となり評価の対象となる。(実際,就職活動にあたってはこの点 が重要なファクターである.残念ながら研究室配属までは諸君にこ の点を訓練する機会がない.)
 レポートおよび図は他人にみてもらうため,コピーされるため, ファイルされるためにあるのだから.のように描く.

 ケミカルエンジニアが使うグラフは片対数グラフ,両対数グラフ が多い.エンジニアはデータを考えなしにプロットするのではなく, そのデータが従うべきあるモデル,理論式を想定した上でプロット する.その理論式の形により適切なグラフが選択される.

【片対数グラフ】

 想定される相関式:
(方眼グラフ 
                   
(片対数グラフ 対log) loglog+log  =(/2.3)x + log
をそのままプロット
=0での値
はもとの式で計算,または
= 2.3(log2-log1)/ (2-1)=(ln2-ln1)/(2- 1)

【両対数グラフ】

 想定される相関式:
(方眼グラフ )
                ↓
(両対数グラフ log vs. log)  log=log+log
をそのままプロット
=1すなわちlog=0がそのままa
(実際の長さ)

【最小2乗法】 想定した式(回帰式)との残差の全データについ ての2乗和を最小にする係数を求める.エンジニアが最小2乗法を 用いる場合には想定した理論式と得られたデータから,理論式中の パラメータを求めて,その後のシミュレーションに使う目的で用い る.したがってむしろ想定する式の選択が重要である.ケミカルエ ンジニアの使う物性値や理論式は=+bx+cx2のような多項 式で表わされる場合はほとんどなく,多くは指数式か非線形式であ る.ポケコンにもある線形式の最小2乗法はあまり役にたたない. さらに,両対数,片対数グラフで整理されるようなデータでは,残 差の定義の問題があるので最小2乗法は推奨できない.グラフ上で 自分の目で相関線をひいて,相関線上の2点から係数を決めるよう にするべきである.

Bデータの取り扱い のまとめ

必修事項5. 図の書き方.
必修事項6. 片対数,両対数方眼紙へのデータのプロットと相関
式の形.
【演習レポートB】

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