・「化学量論係数」stoichiometric coefficient
化学量論式中の各成分のモル数を示す係数.生成物質は正,反応
物質は負にとる.反応に関与しない物質は零.例えば,
H2+(1/2)O2 → H2O
の反応では,H2,O2,H2O
の化学量論係数は各々 -1,- 1/2, 1
・「不活性物質,イナート」inert substance
反応系に入るが反応には直接関与せず系を出る物質.燃焼用空気
に含まれる窒素,反応条件を緩和する目的で原料を希釈する成分が
ある.
・「限定反応物質」limiting reactant
複数の反応物が量論比で供給されないときに量論比に比較して最
も少なく供給される物質.
・「過剰百分率」
限定反応物質との反応に必要な理論モル数より過剰に供給された
反応物質の割合.
・「転化率」conversion
反応により消失した反応物質の供給量にたいする割合
・「収率」yield
供給した限定反応物質の目的生成物に転化した割合.
・「理論空気量」
燃焼の問題で,供給された燃料中の全てのC,H,S をそれぞれ
CO2,H2O,SO2 にするに必要な空気量を言う.その際,空気
は N2 79%, O2 21% の混合物として取り扱う.N2は不活性物
質である.リンク>理論空燃比
・「煙道ガス」flue gas
燃焼の問題で生成したガス.必ず水蒸気
が含まれるが,水蒸気を含む場合を湿り基準,水蒸気を除く場合は
乾燥基準とする.
反応をともなう物質収支問題は,化学種でなく元素の収支をとること で前項と同様に計算される.しかし,転化率がわかっているような 簡単な問題では視察 (inspection) による解法が有効である.以下 の Format に従って「流入=流出」の条件だけを使って計算する.
【例題5.1】
H2Sをボーキサイト系触媒を用いて空気で部分酸化すると,
H2S + (1/2)O2 → S + H2O
でイオウが回収される.(Claus法,排ガスからイオウを回収する.
日本のイオウの生産は全て回収イオウ.)反応器に H2S
と O2 が量論比で供給され,H2Sの転化率が96%のとき反応器出口の
各成分割合を求める.
【例題5.2】
アンモニア生成反応は平衡反応なので転化率は10%である.量論比で
N2,H2が供給されるとき反応器出口流体の組成は?
【例題5.3】
エタンに酸素を混合して 80% C2H6, 20% O2 のガスを得,
これを 200% 過剰空気で燃焼する.エタンの80%はCO2に,10%
はCOとなり,10%は未燃焼のまま残る.排気ガスの組成を求めよ.
【例題5.4】
C,H2 から成る燃料油を燃焼し,CO2 13.4%, O2
3.6%, N2 83.0% の組成の燃焼ガスを得た.燃料油100kgあたり生成する乾き燃焼ガスのモル数を求めよ.
必修事項9
反応を伴うプロセスの物質収支での用語「化学量論係
数」「不活性物質」「転化率」「理論空気量」「過剰空気」
必修事項10 燃焼の物質収支(演習レポートD)
演習 燃焼の物質収支(視察による解法)
【5.1】 CH4 (96-0.5*(指定))% , 残り CO2 の天然ガスを,過剰空 気率 20 + 2*(指定)% で完全燃焼させる.湿り基準での煙道ガスの 組成を求めよ.
【解】
基準)天然ガス(100kmol) CH4 ( kmol )
CO2 ( kmol )
反応) CH4 + 2O2→CO2 + 2H2O(100%)
( kmol )( kmol )( kmol )( kmol )
理論空気量)理論酸素量は( kmol )
理論空気量は( kmol )
このうちN2は( kmol )
?%過剰の条件より,
供給O2 ( kmol )
供給N2 ( kmol )
よって煙道ガスの組成は CO2 ( ) %,
H2O ( ) %
O2 ( )%,
N2 ( ) %
【5.2】ガソリン(ヘキサンとして計算)90 mol%, メタノール10 mol%の燃料を過剰空気率 20 % で完全燃焼させたところ、水蒸気を除く燃焼ガス中のCOの濃度は 0.2 %であった。燃焼ガスの組成を求め、燃料 1 kg につき生成する燃焼ガスの量をもとめなさい。