化学工学基礎L エネルギー収支 W 断熱火炎温度


13.1 吸熱反応における熱の補給

 

【例題13.1】 
メタンの水蒸気改質により水素をつくる反応は

で,吸熱反応である.この反応を1000 ℃に保ために加えるべき 熱量を求める.

【解】1000℃における反応熱を求める.各気体の平均熱容量 pm 25- 1000℃[J/(mol・K)]は CH4 60.77, H2O 38.66, CO 31.70, H2 29.78 である.
(ΔHP-ΔHR)={(1x31.70+3x29.78)-(1x60.77+1x38.66)}x(1000- 25)=21.07 kJ
よって,
ΔHr=(ΔHP-ΔHR)+ΔHr=21.07+205.9=227.0 kJ (吸熱)

この反応を1000℃に維持するには反応熱(吸熱)分の熱を外部から 補う必要がある.すなわちこれが反応を1000℃に保ために加えるべ き熱量である.なお,これをメタン自身の燃焼で補うとすると,メ タンの標準燃焼熱は-890.4 kJ/molなので,上の反応1 molにたいして 約0.25 molのメタンを使う必要がある.

13.2 断熱反応温度,断熱火炎温度

 燃焼で生成する熱が外部に失われることなく,すべて燃焼ガスの 加熱に使われるものと仮定して理論的に計算した温度を,断熱反応 温度という.(断熱火炎温度,理論燃焼温度とも言う) 断熱反応 におけるエンタルピー収支は次式となる.

 

【例題13.2】 
COを100%過剰空気を用いて定圧で燃焼する際の断熱火炎温度 を計算せよ.反応物は100℃で供給する.

【解】
反応:
基準: CO(g)   1mol
物質収支表:

  【反応物質R】   【生成物質P】
CO(g) 1 mol  
CO2(g)   1 mol
2(g) 0.5+0.5 mol  0.5 mol
2(g) 3.76 mol  3.76 mol

@反応物質Rの標準状態→供給温度100℃へのエンタルピー変化

A反応熱(この場合はCOの標準燃焼熱そのもの)
ΔHr=1 mol×ΔH^゚c   = -283.0 kJ (発熱)

B生成物質Pの標準状態→へのエンタルピー変化

外部との熱の出入りがない条件より

これは未知温度に関する4次方程式となる。これを解いて,
=1555 ℃


Lエネルギー収支4のまとめ

 必修事項28  理論燃焼温度の計算法(演習レポートL)


【演習】 ガソリンの理論燃焼温度

ガソリンを (指定)(10〜30)%過剰空気率で完全燃焼させたとき の理論燃焼温度を求めよ。ガソリンは25℃で供給され,ガソリンの 主成分はn-ヘキサンとする。

(VBScriptを使用。Internet Explorer上のみ動作します。)

【解】

( 20%過剰空気率 の場合の解答例 )

反応:
基準:ヘキサン 1 mol
(理論酸素量) = 9.5 mol
(供給酸素量) = 9.5×(1+0.20) = 11.4 mol
物質収支表:

   【反応物】  【生成物】
ヘキサン 1 mol  
2(0.21 11.4 mol  1.90 mol
2:0.79) 42.89 mol 42.89 mol
 CO2   6 mol
2O(g)   7 mol

@反応物は25℃供給なのでΔHR = 0

AΔHr はヘキサン(l )の燃焼熱の定義式:
614(l )+9.5O2(g)→6CO2(g)+7H2O(l )
          ΔHc=-4194.75 kJ
に蒸発潜熱:
2O(l ) → H2O(g) ΔHv= +44.0 kJ
を考慮して,
ΔHr = ΔHc + 7ΔH v = -3886.75 kJ=-3.88675×106 J

B理論燃焼温度を [℃]として,

bced11.gif (5025 バイト)

ΔHP+ΔH r = 0 であるから ,=ΔH r= -3.88675×106 として,4次方程式:

を解く。
(答) (理論燃焼温度)= 1864℃

【非線型方程式解法プログラム】


【試行法による解法】 解くべき温度 t に関する方程式:

A ( T -25) + B ( T 2- 252)/2 + C (T 3-253 )/3 + D (T 4 -254)/4 + E =0

係数 A = , B = , C = , D = , E =

を試行法で解く。

 T に仮の値 を用いて

A ( T  -25) + B ( T   2- 252)/2 + C (T   3-253 )/3 + D ( T   4 -254)/4 + E
                =

右辺が0になるまでT を試行する。


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