精留 表計算 


還流をともなう蒸留操作を精留という。精留操作の定常状態における塔内各段の濃度を求める際には以下の2つの仮定をおこなう。
1.蒸気流量V, 液流量Lは塔内で一定とする。(濃度は塔内で変化するが,モル蒸発潜熱が成分で同じであれば,これは成り立つ。)
2.各段を去る気液の組成は気液平衡にある。(これが「理論段」,「理想段」のモデルである。)
これらの仮定により蒸留塔の塔内各段の気液組成が物質収支と気液平衡関係から導出された連立方程式により表せる。 決められた性能の蒸留塔に必要が理論段の数を求める(設計する)のが「設計型問題」である。2成分系の精留操作に関するMcCabe-Thieleの図式解法は,この連立方程式をグラフ上で解く巧みな工夫である。 計算機による蒸留計算ではあらかじめ理論段の数(整数)が決められた蒸留塔について各段の濃度を求める形式(操作型問題)で取り扱うことになる。Excel上では連立方程式を作成し,ソルバーにより連立方程式の解を求める方法でおこなう。なお,操作型の方法でも,段数を変えて個々に性能計算をおこなって比較すれば設計型の問題に対応できる。

1. 理論段数の決められた蒸留塔の分離性能計算(操作型問題)

【例題2】精留(8段) <dist7.xls>

理論段の数8(段数7+リボイラ)の蒸留塔で相対揮発度α=2.5の2成分系混合液を分離する。F = 1 kmol/hr , 供給濃度 zF=0.5, 供給液の液割合q =0.5, 留出液量 D =0.5, 還流比R (=L/D )=3の設定条件で塔内濃度分布を計算し,塔の分離性能xD, xWを求めよ。

ExcelシートでB1:B7, D1にパラメータ,B9:B17に未知数の適当な初期値を入れる。C10:C17に気液平衡関係(式(1))を,D9:D17に式(2)〜(10)の残差((右辺)-(左辺))を書く。D18に残差2乗和を計算し,ソルバーでこれを目的セル,B9:B17を変化させるセルとして最小化する。これで連立方程式が解かれ,解がB9:B17に得られる。図中のグラフで蒸留塔内の濃度分布を示す。

 

2. 所定の分離をおこなうための理論段の数の決定(設計型問題)

【例題3】McCabe-Thieleの図式解法(マッケーブ−シールの図解法) <dist8.xls>

蒸留塔の段数計算法の代表である「マッケーブ−シールの図解法」は上記連立非線形方程式をグラフ上で解く方法である。ただし,問題の設定が「塔の分離性能(xD, xW)を設定して,それを満たす蒸留塔の理論段の数Nを求める」という形式になる。これを「設計型問題」という。(なお,上記例題の「理論段の数を決めて,その蒸留塔の分離性能を決める」のは「操作型問題」である。)

 


参考:McCabe-Thieleの原論文 Ind. Eng. Chem., vol. 17, 603 (1925)



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