2成分系ガス分離膜モジュールの解析モデル
平膜セル、中空糸膜モジュールなどの分離膜モジュールによる、2成分系ガスの分離・濃縮操作について考える。
その膜分離プロセスにおいて、
膜モジュールの性能として膜面積A [m2] 膜厚みδ[m] 各成分の透過係数Q
1, Q 2
[m3(STP)-m/(m2-s-kPa)]
、
操作条件として供給側圧力Ph
[kPa] 透過側圧力Pl
[kPa] 供給入り口ガス流量Ff
[m3/s] 供給ガス(第一成分)濃度xf を与える。
この条件下で、
供給出口ガス流量Fo[m3/s] 供給ガス(第一成分)濃度xo
透過ガス流量Fp
[m3/s] 供給ガス(第一成分)濃度yp
を求める。(操作型の問題。)
装置内流れの混合状態について完全混合、プラグフローなどのモデルがある。分離膜モジュール内で分離膜を介した供給側流れと透過側流れの各々について混合状態を仮定することで種々のモデルが作成される。
A 供給側:完全混合、透過側、完全混合モデル
このモデルは供給側も装置内組成が一定を仮定するので、正確には微分モデルではない。解析的に解けるので基礎的検討には適している。
完全混合の仮定から膜モジュール内でのガス組成は供給側 xo,
透過側 ypで一定であるので、透過の推進力も一定で:
第一成分のDriving Force(分圧差):
第二成分のDriving Force(分圧差):
であるから各成分の透過速度が次式となる。
(第一成分透過速度)
(第二成分透過速度)
両式の比より、
理想分離係数:、圧力比:
を用いると次式となる。
カット:を導入すると、となる。
( より)
よって xoを消去した次式が得られる。
この式は ypの二次方程式であるので、 ypについて解くと、次式となる。
【実習】理想分離係数α、圧力比γ、カットθ、をパラメータとして xfと ypの関係を図示する。ms03.xls
【実習】ある膜モジュールにつき各成分透過係数などの装置条件と操作条件を与えて、透過側、供給側出口の流量と組成を求める。カットθについての試行計算が必要である。ms04.xls
B 供給側プラグフロー、透過側完全混合モデル(One-SIde MIxing)
各成分の供給側流れF1, F2について微少区間での物質収支をとると、以下の微分方程式となる。
透過側は完全混合を仮定するので、透過ガス濃度 ypは一定である。しかし計算初期にはこれは不明なので、ypを仮定して積分計算をおこない、その結果からypの値を再計算し、仮定した値と一致するよう試行する。
【実習】ms02.xls
C 供給側プラグフロー、透過側プラグフローモデル(Parallel Plug Flow)
このモデルではypは一定でなく、局所の透過側組成が上流で透過したガスの平均値y:
で置き換えられる。
D 供給側プラグフロー、透過側十字流れモデル(Cross Plug Flow)
このモデルでは透過側局所のyが、その位置での透過流束の組成(透過流束の比)で計算される。
以上のモデルの計算結果を図のような中空糸膜モジュールについての実験結果と比較した。この場合はCross Plug Flowモデルが実験値と一致した。