分離プロセス カスケード
【例題】ウラン濃縮プロセスで、原料濃度 0.7%の 235U を 3%まで濃縮するカスケードプロセスを設計する.処理量は 1 kmol/h である.手持ちの分離ユニットは1台につき処理原料流量 0.5 kmol/h の容量であり,これをカットθ =(Q/ F )= 0.5 の条件で操作する.このときの分離係数 α =(yj/(1-yj))/(zj/(1-zj)) = 1.1 である.全段数を 21 段として,理想カスケードを組みなさい.
【解】2成分系の向流多段分離プロセスの第 j 段まわりの流れを右のように表わす.分離ユニットに入る流れが合流して供給流れ F となり濃縮流れ Q と減損流れW とに分離される.この場合,供給側で組成の異なる流れを混合すれば分離効率は落ちる.これを防ぐためにyj+1=xj-1=zj となるような操作が必要となる.これを「ノーミキシング条件」と言い,これが全体で成立するプロセスを「理想カスケード」と呼ぶ.
理想カスケードでは蒸留などの方形カスケードと異なり,各段での流量 F, Q, W は一定でなく,各段で異なる大きさの分離ユニットが必要か、または同一の分離ユニットなら各段における数が異なる点が特徴である.理論によると理想カスケードの分離ユニットの数は下のような特徴的外形となる.(実際,ウラン濃縮工場はこれに近い外見をしている.)
図のような理想カスケードで各段における物質収支は,
Qi+Wi
= Fi
Qi= Cut・Fi
Fi=Qi+1
+ Wi-1 (供給段は
+ Feed )
α=(zi-1/(1-zi-1))/(zi/(1-zi))
である.これを各段について書くことで、非線形連立法方程式を解く問題となる。(「原子力化学工学」ではこれを解析的に取り扱う。)