実験 吸着


吸着分離操作は特に選択性に優れた分離操作であり,化学プロセスをはじめ水処理等の環境対策など応用分野が広い.家庭生活でも浄水器,冷蔵庫の脱臭剤などで馴染みが深い.本実験ではシリカゲル粒子による水蒸気の吸着実験をおこない,吸着操作の基礎を実習する.

吸着と破過曲線

吸着剤であるシリカゲル充填層に,吸着質である水蒸気を含む窒素を通ずると,吸着質が除かれ層出口気体には水蒸気が含まれない.このとき吸着剤層には,入り口より@吸着平衡に達した部分,A吸着が進行している部分(吸着帯),B未吸着層の3つの部分があり,これが出口に向かって進行する.吸着帯が層出口に達すると出口気体中に吸着されなかった吸着質が出てくる.この状態を破過(Break through)という.実用上はこの時点で吸着操作は終了となる.

吸着層出口における破過曲線のかたちは,@流体本体流れ中の吸着質の軸方向拡散,および流体本体流れから吸着剤表面への物質移動速度に依存する.後者の吸着剤表面への物質移動速度はA吸着剤粒子近傍の境膜物資移動とB吸着剤粒子内の拡散抵抗の2つの要因で決まる.

absorp1.gif (10724 バイト)

実験操作

(1)吸着平衡測定

各種塩の飽和水溶液(湿度定点)により湿度を定めた容器中にシリカゲルがある。各々シリカゲル粒子を取り出し,200℃で乾燥させることにより,その重量変化から水蒸気吸着量を測定する。吸着等温線を描け。

(2)吸着破過曲線の測定

adsorp3.jpg (63561 バイト)1.容器重量を測定し,シリカゲルを充填し,重量測定をおこなう.
測定事項:吸着剤乾燥重量

2.充填層をセット,水飽和窒素を流して,時間0より出口空気の湿度を5分程度おきに測定.破過して湿度が一定値になったら測定終了.
測定事項:窒素流量,時間vs.湿度

3.終了後,充填層の重量を再測定.  測定事項:水吸着量

結果の整理及び考察

1.破過曲線を時間[min]対水蒸気体積分率xで描く.これを図1とする.
2.破過曲線の数値積分により空気中の水蒸気の吸着量(g)を推算する.水蒸気は理想気体とする。計算過程を単位つきで明記せよ。計算過程に水の分子量、気体定数が使用されていること。数値積分の方法は破過曲線の近似多項式の積分,図積分等各自工夫せよ.この点についてもレポートで詳細を説明すること.重量測定による水吸着量と得られた推算水吸着量を比較せよ.

absorp2.gif (3470 バイト)


3.破過曲線の形におよぼす吸着剤粒子径の影響,吸着剤と吸着質の親和性の影響,流体速度の影響を,@軸方向拡散,A境膜物資移動抵抗,B粒子内拡散抵抗との関係にて考察しなさい.この実験ではなにが支配的であったか推察しなさい.


inserted by FC2 system