撹拌操作のスケールアップ

小型のモデル槽の状態と同じ撹拌効果を,実際の生産工程における大型槽で実現するための設計基準を得ることをスケールアップという。撹拌は混合が主目的であるが,単純な均一化だけでなく反応や物質移動,熱動の促進など使用目的がさまざまなので,スケールアップの指針もいく種類かある。

ここでは撹拌槽のスケールアップ法を実習する。

まずスケールアップの前後で撹拌機の幾何学的相似が成立していること,流体の物性(粘度μ,密度ρ)が同じであることを条件とする。

撹拌機の回転数をn [s-1],幾何学的形状は槽径 D [m],液深 H [m],撹拌翼径 d [m],翼幅 b [m]であらわすものとする。

スケールアップ法はなにを一定にしてスケールアップをおこなうかによっていくつもあるが,ここでは次の3つの方法を解説する。添え字1は小型モデル槽を,添え字2は大型槽をあらわす。

1.撹拌レイノルズ数一定 nd2=(一定)
一般に流体力学的な相似はレイノルズ数:Re=nd2ρ/μ一定で表せる。よって,

2.単位容積あたりの撹拌所用動力一定 nd2/3=(一定)
撹拌液の単位容積当たりに加えられる動力Pv[W/m](=P/((π/4)D2H)が同一のとき,同一の撹拌効果がたもたれるとの考えによりスケールアップをおこなう。すると,

また,乱流下では動力数NpReによらず一定なので
より となる。

3.撹拌フルード数一定 nd1/2=(一定)
フルード数 Fr=n2d/g も平均的流体挙動を相似とするための無次元数のひとつであり,これをひとしくすることで液表面渦の形状が相似となる。すなわち,

実習問題 (両対数用紙で提出)

問1 いま「スケールアップ容量比」を(d23/d13) で定義し,「単位体積あたりの撹拌動力比」を

で定義する。上記3条件において両者の関係はどうなるか。両対数方眼紙に横軸1〜100でスケールアップ容量比をとり,縦軸10-2〜10で単位体積あたりの撹拌動力比をとり,(1,1)から出発して各関係を表せ。

ヒント:1の「撹拌レイノルズ数一定」では ということは,

すなわち,

問2 内径0.3mの円筒槽に0.45mの深さまで液を入れ,翼径0.1m,翼幅0.03mの6枚羽根タービン翼を毎分300回転(300rpm)の速度で撹拌した実験結果が良好であった。この結果を実装置(学籍番号下2桁)m3の撹拌槽で同様の結果を出すための撹拌翼の回転数および翼形状を
@撹拌レイノルズ数一定
A単位容積あたりの撹拌所用動力一定
B撹拌フルード数一定
の条件で求めよ。

回答様式:テスト装置の幾何形状は
d1/D1=     ,H1/D1=      , b1/D1=      
実装置の槽径D2は V2=(π/4)D22H2 より,D2=        m (H2/D2=H1/D1)
したがって実装置の寸法は,
    翼径  d2=
    翼幅 b2=
    液深 H2=
回転数n2
@の場合 n2=   s-1=    rpm
Aの場合 n2=   s-1=    rpm
Bの場合 n2=   s-1=    rpm


 


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