実験 精留


実際の蒸留装置は段塔,塔頂蒸気の全縮器,塔底液のリボイラから構成され,塔の中段に供給された原料を濃縮された塔頂流れと残液の塔底流れに分ける方法で分離操作をおこなう.このとき塔頂流れの一部を塔に戻す操作がおこなわれこれを還流(Reflux)という.還流のある蒸留(Distillation)が精留(Rectification)である.本実験では4段のオルダーショウ型蒸留塔で精留操作をおこない,精留操作における還流と多段操作の原理を実習する

st991_42.gif (3900 バイト)st991_54.jpg (19922 バイト)

本実験では実際の蒸留塔の濃縮部を模した4段の段塔により蒸留実験をおこなう.原料は流量V,濃度 zFの蒸気として塔底部に供給される.これを還流比 Rで精留をおこない,流量D,濃度 xDの留出液を得る.

この装置は回分式であるため,実際には留出液の抜き出しで zF は変化するが,ここでは zF 一定の定常状態にあるとして解析をおこなう.

蒸気流量V [mol/s], 液流量L [mol/s]は一定と仮定する.全体の物質収支よりV =D+L, および zFV=DxD+Lx4が成立する.還流比(Reflux ratio)R をR=L/Dで定義する.8個の未知数 xD,, x1, y2, x2, y3, x3, y4, x4についての方程式は以下の8個である.

@全体の物質収支:
A塔頂から各段の下までの物質収支:
 
 
(式(2)〜(3)はyn+1xnの関係を与え,x-y 座標上では直線となる.これが操作線である.)
B各段を去る気液が平衡にあるという条件すなわち理論段の仮定より各段で次式が成立する.




(αは実測値(表1)を近似して  )

 


 zFRを与えて以上の連立方程式を解くためのBASICプログラムは以下のようである.変数の割り当ては
xD→X(1) y3→X(5)
x1→X(2) x3→X(6)
y2→X(3) y4→X(7)
x2→X(4) x4→X(8)
である.プログラムの末尾に定数,方程式を以下のように記述している.

4030 DATA 8
4040 '--ショキチ X(1),X(2)...
4051 DATA 0.9,0.8,0.85,0.7,0.75,0.6,0.65,0.5
4060 '--レンリツ ホウテイシキ
4070 ZF = .6: R = 1 (   (Zf) (R) )
4100 F(1) = (R / (R + 1)) * X(8) + (1 / (R + 1)) * X(1) - ZF
4110 F(2) = (R / (R + 1)) * X(6) + (1 / (R + 1)) * X(1) - X(7)
4120 F(3) = (R / (R + 1)) * X(4) + (1 / (R + 1)) * X(1) - X(5)
4130 F(4) = (R / (R + 1)) * X(2) + (1 / (R + 1)) * X(1) - X(3)
4135 A = 4.609 * X(8) ^ 2 - 9.886 * X(8) + 7.748
4140 F(5) = A * X(8) / (1 + (A - 1) * X(8)) - X(7)
4145 A = 4.609 * X(6) ^ 2 - 9.886 * X(6) + 7.748
4150 F(6) = A * X(6) / (1 + (A - 1) * X(6)) - X(5)
4155 A = 4.609 * X(4) ^ 2 - 9.886 * X(4) + 7.748
4170 F(7) = A * X(4) / (1 + (A - 1) * X(4)) - X(3)
4175 A = 4.609 * X(2) ^ 2 - 9.886 * X(2) + 7.748
4180 F(8) = A * X(2) / (1 + (A - 1) * X(2)) - X(1)
4220 RETURN

(4070行の定数を変えて計算する).(プログラムを各自のポケコンに移す.zFRを与えて以上の連立方程式を解くことにより,塔内濃度分布の計算ができる.)

実験操作


1.蒸留装置の保温器を入れる.全縮器冷却水を流す.
2.メタノール水溶液を600cm3程度とり,重量,濃度を測定する.
測定事項:初期液量 F0[mol],初期原液濃度 x0[モル分率]

3.原液をスチルに仕込み,スチルヒーターSWを入れる.
4.還流比を設定して定常になったところで,留出液をサンプリングし,流量D[mol/s],濃度xDを測定する.還流比を変えて測定を繰り返す.
測定事項:還流比R,,流量D[mol/s],濃度xD,さらにzFVを推算.( zFはスチル液x0に平衡な蒸気濃度(表1より)とする.x0は実験中一定を仮定する。)
5.ヒーターを切る.スチル液を抜く.

実験結果の整理および考察

1.実験での還流比と濃度xDの関係を示し、計算値と比較する。これを図1とする。(横軸1/R,縦軸xD
2.ある還流比 Rと,実験の条件にて塔内濃度分布の理論計算をおこなう.これをx-y線図上に示し,実験データと比較しなさい.これを図2とする.


実習 精留


理論段の数8(段数7+リボイラ)の蒸留塔で相対揮発度α(=(学籍番号下1桁)ラ0.1 +1.8)の2成分系混合物を分離する。=1 ,,供給組成=0.5, = 0.5 ,=0.5,=0.5 とした場合,の還流比の効果を調べ,(1/R)(=0〜1)対で示す.
また,塔内組成分布の例を線図上に示す(条件は任意)

物質収支式
@塔全体の物質収支: Fz = DxWx
A[3,2],[4,3],[5,4],[6,5]について濃縮部操作線:
      =(/()) +(/())
B[7,6],[8,7],[9,8]について回収部操作線:
   = ((+qF)/(+qF)) − (/(+qF))

平衡関係
C[,2],[3,3],[4,4][5,5],[6,6],[7,7],[8,8],[9,]について気液平衡関係: 
  α/(1+(α-1))

以上16の方程式で16の未知数を解く。プログラム上の未知数の割り当ては以下の様。

BASICプログラム 2成分系蒸留塔内組成分布の計算 (計算時間7〜8分)

4000 '**** 連立方程式 ****
4005 ' 例題:2成分系蒸留塔内組成分布
4010 '(Z,N ノツクヘンスウハツカワナイ )
4020 '--ミチスウ ノ カズ X()
4030 DATA 16
4040 '--ショキチ X(1),X(2)...
4051 DATA 0.9,0.8,0.8,0.7,0.7,0.6,0.6,0.5,0.5,0.4,0.4,0.3,0.3,0.2,0.2,0.1
4060 '--レンリツ ホウテイシキ
  供給 塔頂搭底 還流比 F   α   
4070 FF = 1: D = .5: W = .5: R = 2: ZF = .5: ALF = 3: Q = .5
各自修正@    各自修正A
4080 L = D * R: C1 = L / (L + D): C2 = D / (L + D)
4090 C3 = (L + Q * FF) / (L + Q * FF - W): C4 = W / (L + Q * FF - W)
4100 F(1) = D * X(1) + W * X(16) - FF * ZF      :全体の物質収支式
4110 F(2) = X(1) - ALF * X(2) / (1 + (ALF - 1) * X(2)):平衡関係
4120 F(3) = C1 * X(2) + C2 * X(1) - X(3)       :濃縮部操作線
4130 F(4) = X(3) - ALF * X(4) / (1 + (ALF - 1) * X(4)):平衡関係
4140 F(5) = C1 * X(4) + C2 * X(1) - X(5)       :濃縮部操作線
4150 F(6) = X(5) - ALF * X(6) / (1 + (ALF - 1) * X(6)):平衡関係
4170 F(7) = C1 * X(6) + C2 * X(1) - X(7)       :濃縮部操作線
4180 F(8) = X(7) - ALF * X(8) / (1 + (ALF - 1) * X(8)):平衡関係
4190 F(9) = C1 * X(8) + C2 * X(1) - X(9)       :濃縮部操作線(q線)
4200 F(10) = X(9) - ALF * X(10) / (1 + (ALF - 1) * X(10)):平衡関係
4210 F(11) = C3 * X(10) - C4 * X(16) - X(11)       :回収部操作線
4220 F(12) = X(11) - ALF * X(12) / (1 + (ALF - 1) * X(12)):平衡関係
4230 F(13) = C3 * X(12) - C4 * X(16) - X(13)       :回収部操作線
4240 F(14) = X(13) - ALF * X(14) / (1 + (ALF - 1) * X(14)):平衡関係
4250 F(15) = C3 * X(14) - C4 * X(16) - X(15)       :回収部操作線
4260 F(16) = X(15) - ALF * X(16) / (1 + (ALF - 1) * X(16)):平衡関係
4270 RETURN

演習2)蒸留塔設計計算

条件:F=200kmol/hr, 塔効率 50%, R=1.5, D/W=1
1. 塔高さH
(実段数)=(理論段の数−1(リボイラ))/(塔効率)
H [mm]=(段数-1)*(段間隔 400)+(塔頂部 1500)+(塔底部 2000)
2. 塔径 Dt
V=DR+D(塔頂)[kmol/hr]=? kg/s
V=DR-W+qF (塔底)[kmol/hr]=? kg/s (大きい方を用いる)
(但し,蒸気平均分子量は30とする.ρL=800kg/m3,ρV=1.0kg/m3,K=0.065)

許容蒸気速度は uv[m/s]=K√((ρL-ρV)/ρV)
塔断面積 A [m2]=V [kg/s]/(uV[m/s] ρV[kg/m3]), 塔径 Dt= ? m


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