実験 蒸発(拡散係数の測定)
物質移動の基礎は着目成分の媒体中の拡散係数であり,拡散係数は粘性係数,熱伝導度と並ぶ基本となる移動物性値である。本実験では気相2成分系相互拡散係数の実測により,拡散の推進力,成分による拡散係数の違い,拡散係数の温度依存生を調べる。
一方拡散における蒸発速度と拡散係数
液Aの表面からその蒸気が静止気体B中を通って蒸発,拡散する状態を一方拡散と言う。本実験では静止気体が窒素で以下添字Bで表し,蒸発成分は添字Aで表す。このとき蒸発成分Aの液表面(添字s)における物質移動流束NA[kg/(m2・s)]は,
(1)
で表せる。DABが両成分気体の相互拡散係数,ω は蒸発成分の質量分率,ρは混合気体の密度,y が拡散方向距離である。NAは一定であるから拡散セルにおける拡散では拡散距離(セル長さ)をl として次式となる.(ただしω∞ =0 とする。)
(2)
実験操作
@拡散セルに試料液(メタノール,アセトン)をピペットで注入する。
A恒温槽温度を30,37,45℃に設定して以下の測定を繰り返す。(計6回の測定)
B窒素を50cm3/s程度流して蒸発をおこない,読取顕微鏡で5分毎に液面位置を測定し,方眼紙上にプロットする。30分程度測定をおこない,直線が得られたらその傾きを液面低下速度(蒸発速度)とする。拡散距離
l は液面(平均値)とセル口間の距離である。
測定値:蒸発液,蒸発温度t [℃],液面低下速度 u[mm/min],平均拡散距離l [mm]
実験結果の整理
1)表1の様式で計算処理をして拡散係数DABを求める。これをレポートの表1とする。ただし,
飽和蒸気圧 はAntoine式: log10 [kPa]= A - B/(C+t [℃]),
表面モル分率xs: xs= /101kPa
質量分率: ω=MAx/(MAx+MB(1-x))
密度: =MB/(1000・0.0224・(273+t)/273)
ρs=(MAxs+MB(1-xs))
/(1000・0.0224・(273+t)/273)
蒸発速度NA: NA= uρl
(ρl:液密度(25℃の値でよい))
拡散係数DAB : DAB = ( 1-ωs )NAl /ρωs (ρ=( +ρs)/2)
で計算される。
2)得られた拡散係数DABを片対数紙に横軸t,縦軸DABでプロットする。
3)図中に藤田式による2成分系相互拡散係数推算値:
を破線で描いて比較せよ。
考察
1)一方拡散の基礎式(1)を導け。
表1 データ整理法
系 | メタノール/窒素 等 |
蒸発温度 t [℃] | |
拡散距離 l [m] | |
液面低下速度 u [mm/min] | |
u [m/s] | |
飽和蒸気圧 p* [kPa] | |
xs [-] | |
ωs [-] | |
気体密度 [kg/m3] | |
ρs [kg/m3 ] | |
平均気体密度 ρ [kg/m3] | |
蒸発速度 NA [kg/(m2・s)] | |
拡散係数 DAB [m2/s] |
表2 物性値表
水 | メタノール | アセトン | ジエチルエーテル | 窒素 | |
H20 | CH3OH | C3H6O | C4H10O | N2 | |
分子量[g/mol] | 18.02 | 32.04 | 58.08 | 74.12 | 28.01 |
沸点 [K] | 373.15 | 337.77 | 329.35 | 307.65 | |
液密度(25℃) [kg/m3] | 997 | 786.6 | 784.4 | 706.6 | |
臨界温度Tc[K] | 647.3 | 513 | 508.4 | 460.8 | 126.3 |
臨界圧pc[atm] | 218.9 | 79.3 | 47.3 | 36.0 | 33.8 |
アントワン定数 A | 7.07406 | 7.19736 | 6.35647 | 6.10962 | |
B | 1657.46 | 1574.99 | 1277.03 | 1090.64 | |
C | 227.02 | 238.86 | 237.22 | 231.20 |