実験  圧力損失


 すべての化学プロセスは管で流体を輸送することで動く.流体輸送に必要な動力や圧力を推算することはプロセス設計の重要事項である.本実験では流体工学で学んだ管内の圧力損失に関する事項を実習する.

管内流れの圧力損失

U字管マノメータ:本実験では水を流体とし,四塩化炭素を封液とするU 字管マノメータにより上下流の圧力差を測定する.マノメータの読みをH [m]とすると差圧ΔP [Pa]は,
ΔP =(ρ’-ρ)g H
で与えられる.(ρ’=1590kg/m3:封液(四塩化炭素)の密度,ρ:水の密度,g =9.807m/s2

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直管:円管内の層流における圧力損失はハーゲン-ポアズイユ(Hagen-Poiseuille)式で与えられる.
D [m]:管内径,L [m]:管長さ,U [m/s]:管内平均流速,μ[Pa・s]:流体粘度)


充てん層:粒子充てん層の間隙を流れる流体の流路を単純化して長さLE , 相当直径DE の直管と考えると,


仮想管内の平均流速UE は,

ここでεは空隙率,SV は粒子の単位容積あたりの表面積で,直径dp の球形粒子はSV =6/dpである.

この直管にHaugen-Poiseuille式を適用すると,

である.よって,充てん層の圧力損失は,

となる.ここでU [m/s]は空塔(充てん粒子が無いとした場合)基準の管内流速である.((LE/L)2は経験的に2.5とした.)これがKozeny-Carman式である.

オリフィス流量計:中央に縁の鋭い円孔のある板(オリフィス板)を管中に設置し,前後の圧力差をよむことで管内の流量測定するのがオリフィス流量計である.オリフィスの円孔断面積をA0[m2],マノメータの差圧をΔP とすると管内の体積流量V [m3/s]は,

で与えられる.係数C が流出係数と呼ばれる無次元の係数で,標準のオリフィスについて便覧に記載されている.C の概略値は0.6〜0.8である.

実験装置および方法

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測定流路は次の4種で形状等を( )に示す.

@長い管(D=4mm, L=1600mm)
A細い管(D=2mm, L=100mm)
B充てん層(L=168mm, D =24mm, 空隙率ε=0.388, 粒子径dp =2.5mm, 流路の実容積29.5cm3
Cオリフィス(孔径2mm, A0=3.14×10-6m2

 封液をとばさないために,各操作の前にバイパス路弁の開きを確認する.測定流路の弁を開け,ニードルバルブで水の流量を調節する.バイパス路の弁を慎重に閉じ,マノメータ封液の液面差H [m]を測定する.各流路につき水流量V ’[cm3/min]とH との関係を4点測定する.

実験結果の整理

各データの差圧ΔP [Pa], 流量V [m3/s] , U [m/s] を算出し表形式にまとめる.このときA細い管については縮小損失を考慮してCオリフィスの同流量での圧力損失を差し引いた値をデータとする.横軸に水流量V [m3/s],縦軸に圧力損失ΔP をとりデータを示す.これを図1とする.

考察

1) @〜Bにつき形状から計算される理論圧力損失を図1に実線で示す.
2) Cオリフィスの流出係数C を求めよ.

水の密度と粘度    
  ρ[kg/m3] μ[Pa・s]
10℃ 999.7 1.306×10-3
20℃ 998.2 1.005×10-3
30℃ 995.7 1.857×10-3

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