実験 撹拌所要動力
撹拌槽は化学プロセスで混合操作や反応操作に使用される基本的装置である.本実験では撹拌に必要な動力を測定し,無次元数で整理することでスケールアップの方法を学ぶ.
撹拌の動力
撹拌にともない撹拌翼の軸に負荷トルクが生ずる.トルクとは軸中心からの距離[m] と接線方向の力の積である.トルクの慣用単位は力に重量キログラムを用いた[kgf・m]である.負荷トルクT [kgf・m]が求まると,撹拌の動力P ' [kgf・m/s]は P ' =2πNT/60 で求まる.(N :軸回転速度[r.p.m.] )これをP [W]単位に換算( 1kgf・m/s=9.80×10-6W )して本実験における撹拌の動力とする.
撹拌に必要な動力は次元解析の手法で羽根、槽の幾何学的形状などの因子と実測された所要動力の関係が整理されている.(次頁図1)ここで各無次元数は次のように定義される.
撹拌レイノルズ数Re : Re=ρnd 2/μ
(ρ:撹拌液の密度[kg/m3],d :撹拌翼直径[m],μ:撹拌液の粘度[kg/(m・s)]
n :回転速度[1/s](=N/60))
動力関数φ: φ=Np /(Fr) m
(指数mは m=(1.0-logRe)/40の形でReと実験的に相関されている.)
動力数Np : Np =P/(ρn 3d 5)
フルード数Fr : Fr =n 2d /g
(g =9.81m/s2:重力加速度)
実験装置および方法
撹拌槽は液容積 9l ,槽内径280mmと液容積 4.5l ,槽内径220mmの2種ある.各々撹拌羽根は羽根径 d =85mmとd =50mmの標準型6枚平羽根タービンを使用する.撹拌液は水,グリセリン65wt%水溶液,グリセリン90wt%水溶液の3種を用いる.
撹拌羽根はトルクメータを介して速度可変モーターに接続される。このトルクメーター(共和電業
TP-E)は「ひずみゲージ式」のもので、トルクに比例した回転軸のねじれ量を電気的に出力するものである。表示計にはこの電圧を表示している。
はじめにトルクメータの検定をおこなう.回転軸にトルク測定用円盤と秤をつけ,秤に質量 0.1〜0.4kg の重りをのせて,軸にかかるトルクをトルクメータで測定する.重量キログラム単位では質量と力の数値は同じなので,(質量の数値)×(力のかか点の軸中心からの距離[m])でトルク T [kgf・m]が得られる.トルクメータ表示の数値(0〜2000)とトルクT [kgf・m]との検定グラフを作成する.また,撹拌機に使用する羽根をつけた状態で空回転してその回転数と軸トルクの関係も検定し,軸トルクのグラフを作成する.撹拌時のトルクは表示トルクから同回転での軸トルクを引いたものである.
5種の撹拌槽について回転数とトルクの関係を各4〜5点測定する.最大回転数は400r.p.m以内で測定せよ.
実験結果の整理
得られたデータを表形式にまとめ、各々Re,φを求めよ。液粘度は気温での値を下表より内挿して求める.動力特性図(Re対φ)を両対数方眼紙上に描き移し、その上にここで得られたデータをプロットし、比較しなさい.
考察
データに@粘度変化の影響,A槽の大小の影響,B邪魔板の有無の影響があらわれているか考察しなさい.
液の物性 |
||||
粘度 μ[×10-3 Pa・s ] | 密度[kg/m3] | |||
10℃ | 20℃ | 30℃ | ||
水 | 1.307 | 1.00 | 0.797 | 1009 |
グリセリン 65wt%水溶液 | 25.3 | 10.5 | 7.87 | 1165 |
グリセリン 90wt%水溶液 | 498 | 121.5 | 75.9 | 1232 |