実験 気相流通反応


工業的な有機合成反応は,原料をガス化して適当な触媒層を通過させておこなう形式の気相流通反応でおこなう場合が多い。気相流通反応は液相回分反応に比べて連続的生産とスケールアップが容易であるという特徴がある。この実験では、気相流通反応の例として、シリカ・アルミナ触媒を用いてイソプロピルアルコールの脱水反応をおこない、その速度論的考察をおこなう。

イソプロピルアルコールの脱水反応

イソプロピルアルコールはプロピレンの水和によって工業的に合成される。ここでおこなう脱水反応はこの逆反応である。



反応温度は 200〜300℃、副反応はおこり難いが、低温では二分子からの脱水によるジイソプロピルエーテル、高温では脱水素反応によるアセトン生成の可能性がある。


 気相流通反応における反応速度の取り扱い方は、右図のように反応管内は押し出し流れであると仮定する。ここで扱うイソプロピルアルコールの一分子脱水反応の反応次数は1次なので、反応速度は反応物質の濃度
A

により
(2)

で表せる。 ここでA0;原料送入速度[cc/s]  ;転化率(≡(反応したモル数)/(送入した原料モル数))  ;反応容積[cc] ;反応速度定数


転化率と濃度の関係は、
(3)
なので
(4)
これを、反応管入口から出口まで積分して、
(5)
の代わりに触媒容積
cをもちいて標準状態(25℃、1気圧)に換算すると反応速度定数k は次式となる。

(6),
 (7)
;反応温度[K] 
0; 298.15K) ここでSV は空間速度(Space Velocity)と呼び、流通反応操作を取り扱う場合の基礎である。 これは回分反応における反応時間の逆数に相当する。 ここではSV を次式で算出する。 
          
(8)

実験装置および方法

rexg13.jpg (126091 バイト)

実験装置を右に示す。反応管は内径18mm、触媒はシリカ・アルミナ触媒(SiO2 90%、Al2O3 10%、Cr、平均粒径2mm)で使用量は1g、容積c=1.35cm 。

以下の手順で実験を行なう。
(1) 空気を通して触媒を再生する。    (600℃、2時間)
(2) 窒素で反応器内の空気を置換する。
(3) 反応管の温度を設定温度にしてチューブポンプにより原料のイソプロピルアルコールを供給する。
(4) (反応温度を変える実験) 原料供給速度一定で、反応温度を初期温度,
+20,+35,+50℃ と45分毎に変化させる。
(5) 測定事項
  @ 反応温度 2.5分毎
  A 原料供給速度 ビュレットの目盛を15分毎に読み取り、その差から算出。  [mol/s]単位に換算する。(イソプロピルアルコールの比重は 0.785)
  B プロピレン発生速度 10分毎に測定。 [mol/s]単位に換算。
   以上の3つの測定量をプロットした図1の様式の図を描きながら測定する。
(6) 実験が終了したら窒素で反応物をパージする。

実験結果の整理

各実験条件につき、転化率 および[SV0 を算出して(6)式から反応速度定数を求める。

考察

(1) アレニウス式;
にもとずき、図3のようなプロットから見かけの活性化エネルギーを求めよ。
(2) 気体分子運動論に基ずいて、この”活性化エネルギー”の意味を述べよ。
注;この実験中に描いた図に限り、レポートにコピーを用いてよい。




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