フーリエ級数とその応用

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フーリエ級数

フーリエ級数は「周期性」をもとに三角関数と一般の関数およびその微分・積分・微分方程式を結びつけるものである。

「関数f (x )のフーリエ級数展開」とは次式のように、三角関数の級数で一般の関数f (x )をあらわすことである。

偶関数、奇関数 フーリエ級数の計算では関数f (x )の対称性を活用する。その例がf (x )が偶関数か奇関数かの区別である。偶関数とは

が成立するもの、奇関数とは

が成立するものである。

フーリエ係数の公式(証明省略)

f (x )が周期2πの周期関数でかつ 偶関数の場合は、f (x )のフーリエ級数はフーリエ・コサイン級数:

となり、その係数は

,     

である。

f (x )が周期2πの周期関数でかつ奇関数の場合は、f (x )のフーリエ級数はフーリエ・サイン級数:

となり、その係数は

である。(なお、周期関数なので、 

フーリエ級数による関数の展開

フーリエ級数はおよびそれによるフーリエ解析は電気回路の解析や機械における振動解析になくてはならないものである。さらに、フーリエ解析により信号の周波数分布、スペクトルを調べることは物質の高度な分析に応用される。「赤外フーリエ分光法」「高速フーリエ変換による画像解析(CTスキャナ)」などが現在の最先端におけるフーリエ級数の応用といえる。

【例】−方形波− 図のような周期関数:

, 

をフーリエ級数であらわしてみる。この関数はコンピュータのクロックやデジタル信号の基本波形である方形波(矩形波)である。

この関数は奇関数なのでサイン級数のみでよい。

となる。cos 0 = 1 なので、

である。

 なので、

したがって、フーリエ吸収bnは、

となる。よって、方形波が、

のようにフーリエ級数であらわせた。このようにフーリエ級数はデジタル(0と1)とアナログ(連続関数 sin )をつなぐものである。

(参考)sin 3x はsin x に比べて周期(波数)が3倍である。この周期を横軸にとり,波の大きさ(係数)を縦軸にとると図のようになる。これは関数 f (x ) の周波数による表現であり, f (x )の「周波数スペクトル」である。このような解析法の延長が「フーリエ変換」である。

 

【例】ノコギリ歯状関数

図のような関数:

をあらわしてみる。これはテレビ画面の走査線を描く偏向電流の形である。

奇関数であるので、an =0。また、

部分積分をおこない、

したがって、となり、 f (x ) のフーリエ級数は次式である。

(fo01.xls)

 

なお、周期関数 f (x ) の周期を2πではなく一般的に2l とした場合は、フーリエ級数展開:

となる。

フーリエ解析の偏微分方程式解法への応用

もともとフーリエ解析はフーリエ(J.B.J. Fourier, 1768-1830,フランスの数学者)が熱伝導の偏微分方程式を解くために開発した方法であった。

図のような板の冷却について解析する。板が充分広ければ、位置に関する独立変数はx 方向の一次元とできる。時間tx が独立変数であり、その関数が温度θである。板の表面温度が常に0℃であり、内部の初期温度が図のようであるとする。

一次元非定常伝熱の基礎式:

境界条件:

初期条件:

変数分離法を用いて関数を と仮定する。すると基礎式は次式のように変数分離される。左辺は距離x ,右辺は時間t のみの関数だからこの式の値は定数でなくてはならない。これを-p 2 とおく。

すなわち、偏微分方程式が2つの常微分方程式となった。

前者の一般解は(既出)次式: ,後者の一般解は:ある。よって、

 A=CA’, B=CB’)

境界条件を満たすように定数を決め る。境界条件に代入して、

   

 より 、すなわち

である。ここで、ひとつのn に対してひとつのp すなわちひとつのθ が対応している。それらを区別するために各量に添え字n をつけることにする。

この各々が解であるが、これらの重ね合わせが初期条件を満足しなくてはならない。

ここで、f (x ) のフーリエ・サイン級数展開になっているから公式より,係数Bn が初期条件を使って次式で計算できる。

これは、である。 よって、t 時間後の温度分布が次式で与えられ、これが解となる。

(この式は第2項以下は小さいので、近似的には第1項のみでもよい。)

【実習】l =1, a =1として温度変化を計算してみる。fo02.xls, 雛形 fo02_temp.xls


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