流量測定

 

ベンチュリ計

ベルヌーイの式(u2/2+p/ρ=const.)から、流量が同じなら流速が速くなると圧力が減少する。この原理を直接応用して流量を測定するのがベンチュリ計(venture meter)である。(JIS B 8302)図のように管路中で管径を絞ることで、圧力差を測定し、それから流量を求める。

管が水平として、管径D、流速u1、絞り部の径d、絞り部の流速u2とすると、ベルヌーイの式より、

流量Qは一定なので、

すなわち

これを上式に代入して整理すると次式となる。

ここで、で開口比と呼ぶ。いま管と絞り部のマノメータによる差圧測定が高さHであると、

となる。

【例】内径260 mmの送水管に絞り部の径130 mmのベンチュリ計を取り付けたところ水銀マノメータの差が300 mmであった。流量はいくらか。

オリフィス流量計

管内を流れる流体の最も簡単な流量測定法がオリフィス計である。管内径D1[m],流路断面積A1[m2]の直管内に中央に径D0[m],円孔断面積A0[m2]の穴を開けたオリフィス板をはさむ。管内を流れる流体はこの円孔を通過するさい、流路の断面積が縮小して流速が増大し、下流での静圧が低下する。この静圧低下は流量にほぼ比例するから、オリフィス板前後の圧力差(差圧)を測定することで流量を知ることができる。このオリフィス計による流量測定はJISによりオリフィス板の形状、測定法などが標準化されている(JIS Z 8762)

オリフィス板の上流における断面1と縮流部の断面2との間にベルヌイの式を適用すると、

オリフィスの開口比A0/A1m, 縮流部の流路断面積A2と円孔断面積A0との比を縮流係数α=A2/A0とする。連続の式から

,

であるからこれらを上式に代入して整理すると、

となる。この導出では断面1、2間のエネルギー損失を無視したが、実際にはわずかながらエネルギー損失があるからその補正のためにψを掛けて、

となる。ここで とおけば、管内平均流速は

また、管内を流れる流体の体積流量
V

となる。係数C [-]が流出係数と呼ばれる無次元数である。

 

差圧(P1-P2)[Pa]の測定には簡便にはU字管マノメーターが用いられる。封液の高さの差H[m]から差圧が得られる。いま流体、封液の密度をそれぞれρ,ρ’[kg/m3]とすると、

P1-P2=(ρ’-ρ)gH

である。

JIS等の規格で定められた標準の形状のオリフィス板については図のように流出係数Cと管内レイノルズ数ReD=Du1ρ/μとの関係がmをパラメータとして示されている。

C の値はReD の一定値以上の値ではReD に無関係に一定となる。このReD の値を裕度限界レイノルズ数といい、流量の測定は裕度限界以上のReD の範囲 (C0 )でおこなうのが普通である。なお、JIS規格のオリフィスの場合は の範囲でC0 は近似的に以下のmの関数として与えられる。

 (適用範囲は )

 

ロータメーター   

入り口端から出口端へ管径が一定でひろがるようにしたガラス管(テーパ管)中に、浮き(float)を浮かせることで、その位置により管内の流量を測定するのがロータメーター(rotameter)。オリフィス計は流れの面積を一定に絞り、圧力差と流量の関係で流量測定をおこなうが、ロータメータでは逆に圧力(フロートの重力)を一定に保ち、流量と流路面積の関係から流量測定をおこなう。よって面積式流量計とも言う。

フロートが静止しているとき、フロート前後の圧力差と重さが釣り合っている。

Vf:フロートの体積、ρf:フロート密度、Af:フロート面積(流れに垂直な面)。フロートと管の環状部の面積をA2、テーパ管断面積をA1とすると、流体の流速u1と環状部の流速u2はベルヌイ式より、

だから、

流出係数(coefficient of discaharge) CDで補正して、流量Qにすると次式となる。

ΔPとフロート質量の関係を代入するとロータメータの流量として次式が得られる。

ロータメータの流出係数はオリフィス同様、流量が大きい範囲では0.6-0.75の一定値であるが、構造ににより異なるので、流出係数によらずあらかじめ検定線を作成して用いるのが普通である。検定と異なる流体を測定するときは密度補正の必要がある。

 

ピトー管    >ピトー管カタログ

U字管を流れ中に置き、片方の口は流れ方向に垂直に、もう一方の口は流れに平行に保つ。管口面が流れに平行な管には流体の静圧(気圧)P2が作用する。一方、流れに垂直な管入り口には、
P1=P2-ρu2/2
で与えられる圧力(総圧)が作用する。これは管口で流れがせきとめられるため、流体の有する運動エネルギー
u2/2が圧力エネルギーに変化するからである。総圧と一方の静圧の差を動圧(dynamic pressure)と呼ぶ。この動圧はU字管マノメーターの封液の高さの差Hとして測定できるので、管口局所の流速uが次式で測定される。

この原理を利用したのがピトー管(Pitot tube)で、局所的な流速の測定や航空機で用いられる。ただし、ピトー管で測定される差圧は速度の2乗に比例するから流速の小さい場合は測定が難しくなる。例えば空気流速u=1m/sに対して動圧は0.07 mmH2Oのように微少であるので、差圧測定には高精度のマノメーターが必要である。

 

量水せき

水路中に流れをせき止める板をおき、板上部の切欠きから流出させるものをせき(weir)という。せきにより上流の水面とせき上縁の高さ(せきのヘッド)Hを測定すれば、水路の流量を求めることができる。これは日本工業規格(JIS B 8302)に規定されている。

 

Bのせき板を高さHだけ超えて流れる流れの断面において、水面から深さhの面での流速uは、トリチェリの定理から、
となる。よってこの深さの微小断面bdhから流出する流量dQは、流出係数CD(通常0.6)を考慮して、
となる。よってせきの断面積
A =b
×Hから流出する流量Qはこの積分より次式となる。

この式よりせきのヘッド
Hを測定することで流量が求まる。実用的なFrancisの式は、 である。

角度2θの三角せきの場合は、
より、

となる。角度90度の三角せきでは、 である。(CD=0.6)三角せきは流量がH2.5乗となるから、四角せきより流量測定範囲は広いことになる。

JISには三角せき、四角せき、全幅せきの3つについて厳密な流量公式が定められている。上の四角せきの場合は次式である。

(但し適用範囲は、B=0.5-6.3m, b =0.15-5m, D =0.15-3.5m, H =0.03-0.45b)


演習

11-1】【ロータメーターの計算】長さ30 cm、内径が上端で25 mm、下端で20 mmのテーパ管、フロートの径20 mm( Af  =3.14×10-4m2)、密度ρf= 4800 kg/m3、体積6 cm3( Vf  =6×10-6m3)のロータメーターがある。水を流して、フロートがテーパ管のちょうど真ん中にあるとき(A1=(π/4)×(0.0225)2m2)の流量を [l /min]の単位で求めよ。CD =0.7とする。ρ= 1000 kg/m3

11-2】【オリフィス】水が内径80 mmの水平な鋼管内を流れている。管路に孔径40 mm の標準オリフィスを挿入したところ、水銀を封液とするU字管マノメータの読みは20 cmであった。水の流量を求めよ。


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