ポンプと流体輸送 |
ヘッドと揚程
ベルヌイ式:
で各項が長さの次元を持つときこれをヘッド(水頭, head)と言った。
ポンプによって流体が得たヘッドの増加量を揚程(head) H という。ポンプで流体をくみ上げるときに要する全エネルギーがポンプの全揚程(total head)で、これには実際のくみ上げ高さ(実揚程)に加えて管内の摩擦損失や速度ヘッドが入る。
(λ:管路の摩擦損失)
すなわち全揚程は二つの部分からなり、一方は液速度に無関係に一定であり、他方は液速度の2乗に比例して増大する。
ポンプ
タービンポンプ 井内盛栄堂カタログより
チューブポンプ井内盛栄堂カタログより
ダイヤフラムポンプ井内盛栄堂カタログより
真空ポンプ井内盛栄堂カタログより
コンプレッサー井内盛栄堂カタログより
手押しポンプ井内盛栄堂カタログより
遠心圧縮機のタービン
遠心ターボポンプの原理
羽根車を回転させて流体のエネルギーと機械的エネルギーとの変換を行うのがターボ機械である。そのなかで流体を半径方向に流す形式を遠心ターボ機械という。ポンプとしては遠心ポンプ(渦巻ポンプ)がある。流体から動力を取り出す水車にも応用される。角運動量法則からこの原理を述べる。
運動量を軸のまわりの角運動量、力を同じ軸まわりのトルク(モーメント)に置き換えると角運動量法則が得られる。角運動量は速度の接線方向成分、モーメントアーム、質量の積:
mrcosv、トルクT
は力の接線方向成分とモーメントアームの積:Fr である。
図において羽根車中で旋回しかつ外側に流れる流体を考える。この絶対速度をv,周速度u とする。v は羽根車の面に垂直な速度である。ABCDの流体が微少時間Δt 後にA’B’C’D’へ移動した。その流量をQ、密度をρとすると、Δt 間にABおよびCDを通過した質量m はρQΔtである。この間に流体はABB’A’分の角運動量ρQv1r1cosα1Δt を失い、CDD’C’分の角運動量ρQv2r2cosα2Δtを得た。この差を時間Δt で割ると各運動量の時間変化率となり、これが流体に働いたトルク(モーメント)T に等しい。
これを角運動量法則という。
遠心ターボ機械ではこれが羽根車に加えるべきトルクになる。トルクと羽根車の角速度ωの積がポンプの動力であるから、動力P
[N・m/s],[W]は、
となる。一方、流体を流量Q [m3/s]で全揚程h
[m]上げるのに必要な動力は、ρQgh
であるから、
。
これがポンプの理論揚程である。これはα1=90°のとき最大となり、
となる。
以上のことは流体を外側から内側にながして、軸動力を得る、すなわち水車(発電機)にも全く同様に適用できる。
【例】羽根車の出口の直径を 2r2 =400 mm,α1=90°、β2=22°、w2=12 m/s、ポンプの回転数が 1400 rpmのとき理論揚程を計算する。ω=2πN/60=146.5 rad/s、u2=r2ω=29.3 m/s、cosβ2=0.9272より、h = 54.3 m。
遠心ポンプの性能は一定回転数において横軸に吐出量Qを、縦軸にポンプの揚程H、軸動力P、効率ηをとった性能曲線であらわす。相似な遠心ポンプ間では回転数N、流量Q、揚程H、所要動力Pの間に次ぎの関係が成立する。(次元解析の項参照)
Q1/Q2=N1/N2
H1/H2=N12/N22
P1/P2=N13/N23
流体輸送の動力
1秒間にρgQ [N]の流体をH
[m]の高さに持ち上げる仕事はρgQH [N・m/s]である。したがって毎秒Q
[m3]の流体を全揚程H [m]の高さにくみ上げるポンプの理論動力Pw は、
である。Pwを水動力(water house
power)という。実際のポンプの運転ではポンプ内の流体摩擦、軸受けの摩擦などによる動力損失があるから理論動力より大きな動力が必要であり、この実際に必要な動力を軸動力(shaft
horse power) P
という。両者の比がポンプ効率ηである。
ポンプ効率はポンプの形式、吐出量で異なるが、おおよそ60-85%である。
【例】全揚程24 m、水を揚水量 0.03 m3/sで運転するポンプの理論動力を求める。
P =ρgQH =1000×9.8×0.03×24= 7.06 kW。
なお既述のように、ヘッドH の値を介さない場合には、機械的エネルギー収支の式:
から流体輸送の動力を直接得られる。すなわちこの式が管路内の流体1 kgを断面1から断面2まで輸送するために必要な機械的エネルギーW、すなわちポンプにより流体に加えなければならない仕事の大きさを与える。したがって、輸送する流体の質量流量をw [kg/s]とすれば、必要な動力Pw はWw [J/s = W]である。(機械的エネルギー損失F には摩擦エネルギー損失Ff (=ΔP/ρ)、継手・弁によるエネルギー損失Faなどが含まれる。)
【例題】 内径75 mmの管による全長L = 200 mのパイプラインで水(ρ=1000 kg/m3)を輸送する。実揚程は10mである。管の摩擦係数f =0.006、弁・継手による抵抗の相当長さLe=50 m、ポンプの効率η=50 %とする。ポンプの特性が次のように与えられているとき、この輸送に必要な動力を求める。
吐出量Q [m3/s] |
0.0028 |
0.0039 |
0.0050 |
0.0056 |
0.0059 |
揚程H [m] |
23.2 |
21.3 |
18.9 |
15.2 |
11.0 |
【解】管内流速を u [m/s]とすると、
Q =(πd 2/4)u =0.0014πu [m3/s] すなわち u
=232.5Q
全揚程H [m]は管摩擦の式より次式となり、これをQであらわす。
=10+4.08u 2
=10+2.2×105Q 2
これとポンプのH -Qの関係から
右図上で解を求めると、
H =16.4 m、Q =0.0054 m3/s
となる。よって動力は、
P=ρQHg/(η/100)=1740
W=1.74 kW。
【例題】 水を体積流量 5 m3/h (0.001389 m3/s , w =1.389 kg/s)で100 m 輸送したい。輸送にかかる動力費と、設備費を勘案して、1/2 B, 3/4 B, 1 B, 1 1/2 B の4つの管径のいずれが最適か見積る。設備費の見積は各々、\466,500, \685,000, \940,000, \1,600,000であった。ポンプ効率η=70 %、年間運転時間 8000 h、電気料金は1 kWhあたり\8 、設備費の20%を年間固定費とする。
【解】
管 |
1/2 B |
3/4 B |
1 B |
1 1/2 B |
管内径 |
0.0161 m |
0.0216 m |
0.0276 m |
0.0416 m |
管長100 mでの圧力損失 ΔP |
2538 kPa |
621 kPa |
192 kPa |
27.1kPa |
理論動力 Pw=Ww, |
3.53 kW |
0.863 kW |
0.267 kW |
0.0376 kW |
動力 P |
5.04 kW |
1.23 kW |
0.381 kW |
0.0537kW |
年間電気料金 |
\322,000 |
\78,700 |
\24,400 |
\3,440 |
年間固定費 |
\93,300 |
\137,000 |
\188,000 |
\320,000 |
電気料金+固定費 |
\415,000 |
\215,700 |
\212,400 |
\323,000 |
演習レポート 12
【流体輸送の動力】 ポンプにより内径80 mm、長さ20 mの管路で密度ρ=1200 kg/m3の液体を流量Q =0.0115 m3/sで15 mの高さに汲み上げる。管内流速はu =2.3 m/sとなる。管路中の弁・継手の抵抗の相当長さを5 mとする。管摩擦係数はf =0.005 とする。ポンプの効率η=60 %として所要動力を計算せよ。