静止流体と圧力・浮力
圧力
圧力の単位はSIでは[Pa](パスカル)そのほか[Kg/cm2](キロ)、[mmHg]がある。水柱の高さ[mH2O]をヘッド、頭(head)といい、実用ではこれが圧力の代用に使われる場合がある。
図は大気圧、真空、ゲージ圧、絶対圧について説明している。
マノメータ・圧力計
ボンベの圧力計はゲージ圧 |
水銀柱式大気圧計 |
マノメータ 水/四塩化炭素 |
水銀柱式真空計 ベネット型 |
精密真空計 |
精密微差圧計 水面上に伏せて浮かべたカップ(沈鐘)の内外の圧力差による上下を差動トランスで計測する。(柴田科学カタログより) |
密度の異なる流体で U 字管を構成すること(液柱計)で圧力差が測定できる。
水銀気圧計は真空と大気圧の水銀柱の高さの差で気圧を求めている。標準大気圧は760 mmの水銀柱の高さである。水銀の密度は13.6g /cm3(=13.6×103 kg/m3)。底面積 1 m2に対してこの高さの水銀が及ぼす重力は、
(13.6×103×0.76) kg×9.8 m/s2=101.3×103 N
これが1 m2にかかるので、
(大気圧)=101.3×103 N/m2=101.3×103 Pa=101.3 kPa
大気圧
流体中の圧力分布は、密度一定では
となる。 密度が変化する場合は、
である。たとえば大気の温度分布は
で与えれられるので、
を代入して積分すると、
より、
となる。これを図示して大気の温度と圧力が高度によって変化する様子を示した。
パスカルの原理と油圧
密閉容器内の液体の一部に圧力を加えると、その圧力は同じ大きさで液体のすべての部分に伝わるまた、圧力は容器の形状に関係なく、壁面に垂直に作用する。これをパスカルの原理(Passcal’s principle)という。これを利用したのが油圧装置で、断面積A1[m2]のピストンに力F[N]を加えれば、p=F/A1[Pa=N/m2]の圧力が液体に伝わる。この圧力が断面積A2[m2]のピストンに伝わり、質量V[kg]の物体(Vg[N]の重力による力)を支えている場合、両ピストンに作用する圧力pが等しい。
すなわち、
よってピストンの面積比にしたがって小さな力Fで大きな荷重Vgをささえることができる。
壁面に働く液圧
水中の圧力は液面からの深さのみに比例して上昇する。水に接する壁では液深に正比例して水からの圧力は上昇する。深さh[m]のところでρgh[Pa]となる。
幅B,液深Hの壁では、平均圧力pmは(ρgH/2)なので、壁におよぼす全圧力は、
P=(1/2)ρgBH2[N]
となる。
【例題】幅6m、高さ10mの水門壁がある。水位が8mのとき扉に作用する全水圧を求める。
【解】P=(1/2)×1000×9.8×6×82=1.88×106N
浮力
流体中に物体があると浮力(buoyancy)が作用する。アルキメデスの原理により、浮力は物体が排除して流体分の質量にかかる重力に等しい。流体中の物体は主として自身の質量にかかる重力とこの浮力との関係で浮き沈みする。
【ガリレオ温度計】(水の密度[kg/m3]:10℃:
999.7, 20℃: 998.2, 30℃: 995.7)
【ボーメの比重計】
等加速度運動における流体の圧力
流体を入れた容器が等加速度運動をしている場合を考える。水平方向xの加速度をα=du/dtとする。加速度を流体中の(dx×dy×単位厚さ)の流体粒子を考えると、質量はρdxdy, 圧力は左面でp,右面でp+(∂p/∂x)dxである。力のつりあいは次式となる。
よって
これは流体が等加速度運動をすると、流体柱中には負の圧力勾配ができることを示す。
流体が重力加速度gと水平方向の加速度αのベクトル合成により、全加速度g’を受けると考えてもよい。
容器内液の回転運動(強制うず)では流体は剛体回転し、相対的静止状態となる。半径rの位置での加速度は遠心力によるrω2なので、半径方向の圧力勾配は
となる。ある水平面内の圧力分布は、これを、rで積分し、r=0でp=p0とすれば、
である。いま考えている水平面から液面までの高さをhとすれば、この液高さ分の重力による圧力p=ρghがこれに等しいので、
となる。よって液面がr2に比例した放物面になることがわかる
演習レポート 2
【浮き式比重計】浮きにより液体の密度(比重)を測定する。(ボーメの比重計)いまバッテリー液の比重を測ったところ、水の場合よりD[m]多く浮き上がった。この液の密度および比重を求める。浮き部分の管の直径は6mm、比重計の質量Wは0.004kgである。
【解】
浮力は排除した体積の液体に働く重力の力に等しい。水に浮いている場合の水面下の体積をV[m3]として、
(水のρ=1000kg/m3)
よりVを得る。バッテリー液の場合はさらに浮いた体積をΔVとして、
よって、
ΔVをDから計算する(ΔV=(π/4)×0.0062× D)ことでバッテリー液の密度ρ’[kg/m3]が求まる。(比重)=(ρ’/ρ)。