粒子層内の流れ

 

 

粒子層の圧力損失

化学プロセスでは触媒反応器、吸着装置、充填式蒸留塔など粒子状の充填物中を流体が流れる場合が多い。このような粒子充填層を通過する流れの圧力損失を説明する方法として、(1)管内流れの圧力損失をもとにした方法と(2)単一粒子の流体抵抗をもとにした方法の二つがある。

管内流れの圧力損失をもとに粒子層流れの圧力損失を求める方法

 粒子充填層の間隙を流れる複雑な経路を単純化して、長さLE 、径DE の直管に相当すると考える。

V [m3]: 充填層の全容積
ε
:空間率
SV’= SV (1-ε) : 充填層単位容積あたりの粒子表面積
SV : 粒子の単位容積あたりの表面積(径dp の球ではSV  =6/dp

この仮想の管内流れの圧力損失は層流としてハーゲン・ポアズイユ式が適用できるとすると、

仮想の管内平均流速uEは、空塔速度をUとすると、

であるから、充填層の圧力損失は次式で表わせる。

この式は
Kozeny-Carmanの式と呼ばれる。kKozeny定数と呼ばれる実験定数で、k5である。この式を簡単に書いた形式:

Darcyの式と呼ばれる。

この式は充填層の圧力損失が空塔速度Uに比例することを述べているが、流速が速くなると圧力損失は U 2に比例し、さらに空間率εの影響も (1-ε)/ε3 に変わる。このことを考慮して、層流から乱流域までの充填層の圧力損失を表わす実験式としては

がえられている。ここでφは
,
φ=(粒子と同体積の球の表面積)
/(粒子の外部表面積)
である。この式はその理論から毛管モデルと言える。

単一粒子の流体抵抗をもとにした方法 

粒子群中にある一個の粒子が流体から受ける抵抗力Rfm は、球の抵抗Rf と粒子層の空隙率εとから便宜的に次式で書ける。

F (ε)は空隙率関数というもので、Stokes法則の範囲では実験および理論解析から、
F (ε) =6(1-ε)/ε3  (0.3<ε0.75), F (ε)=ε-4.63 (0.55<ε<1)
で与えられている。

粒子層の空塔速度Uと流体が粒子間隙を通過する速度uとは、u =U/εの関係にあるから、Stokes域での関係(Rf =3πμdp u )より、

となる。

粒子層中の粒子の個数 N は、粒子径dp の粒子が充填されているとき、
すなわち

であらわせる。
Aは粒子層断面積、L は粒子層の高さである。

この式とRfm の式から、全粒子に作用する力Rfm N は次式となる。

これが断面積
Aの粒子層を通る流体の圧力損失に等しい:

ので、

となる。この式が粒子に作用する力から求めた充填層の圧力損失で、抗力モデルといえる。なお、式中の係数
108は実測とは一致しないので、これを 180 とした式が一般に使われる。

透過法による比表面積測定法

Kozeny-Carmanの式を変形すると、粒子層の単位容積あたりの表面積SV[m2/m3]が、

で得られる。これより粒子層の圧力損失を測定することにより、粒子の比表面積が推定できることになる。

(粒子単位質量あたり表面積Sm [m2/kg]は、 。)

図は透過法による粒子の比表面積測定法(Lea-Nurseの比表面積計)である。

濾過の理論

液体中に懸濁している微小な固体粒子を分離する方法が濾過(filtration)である。濾紙や布などの濾材(filter medium)に懸濁液を通すと、粒子が濾材上に堆積し、清澄な液のみが濾材を通る。この過程すなわち濾液(filtrate)の量と濾過時間の関係を解析するのが濾過理論である。

この濾過操作では濾材上に堆積した粒子の層(これをケーキと呼ぶ)が次第に厚くなり、液の透過速度を低下させる。濾過過程の解析は基本的には粒子層の圧力損失の解析と同じであるが、ケーキ(filter cake)の堆積により非定常状態となることが特徴である。

濾過における濾液の流速Uと圧力損失の関係はケーキ層(厚みLC )、濾材(厚みLM )に対してDarcyの式であらわせる。
濾材:
ケーキ層:
Rc はケーキの抵抗をあらわすが、これは堆積したケーキの厚さLcに比例するから、

と書ける。ここで、
c [kg/m3]は濾液の単位体積あたりの乾燥ケーキ(固形分)の質量、α[m/kg]がケーキの比抵抗(specific resistance)と呼ばれるものである。比抵抗は濾過原液の濾過しやすさの度合いをあらわす。この比抵抗はケーキの堆積・圧縮により変化する場合が多いが、そのような比抵抗が圧力に依存するケーキを圧縮性ケーキ、比抵抗一定のものを非圧縮性ケーキという。

これらより、全透過圧力ΔP (=ΔPm+ΔPc)は、
すなわち


となる。これが濾過の基礎式である。
K ,V0 が濾過定数と呼ばれる定数である。

ΔP =一定、すなわち定圧濾過ではK は一定だから、t =0V =0 としてこれを積分し、V 02/K = t 0とおくと、

なる
Ruthの濾過方程式となる。

V 0 [m3]は濾材の抵抗をこれと同等な抵抗をもつケーキに置換えたとき、この仮想のケーキに相当する仮想の濾液量であり、0 [s]は濾液量V0 [m3]を得るために必要な仮想の濾過時間と考えることができる。この濾過方程式により、濾過圧力ΔPが決まり、濾過原液の比抵抗αがわかれば、ある濾過面積の濾過装置による濾液量と時間の関係がわかる。

ある濾過装置についての濾過定数を求めるには、(dV/dt)の式の逆数をとった式:


を基本して、Vdt/dV のプロットをおこない、その直線の傾きと切片から得られる。これが微分法である。さらに、基礎式を積分して変形すると、


なので、Vt/V のプロットの傾きと切片から求めることもできる。これは積分法である。

流動層

流動層(fluidized bed)は固体粒子層の下部から気体・液体を流して、粒子を浮遊・流動化させる装置で、乾燥・吸着・燃焼・触媒反応装置など化学工学的操作で広く用いられている。

分散板上に固体粒子を充填して、流体の流速Uを増してゆくと粒子層の圧力損失は図のように変化する。低流速では固定層の圧力損失としてΔP は増加するが、ある流速(最小流動化速度minimum fluidization valocity MF)以上になると粒子層内に気泡が生成し、粒子は浮遊・流動化するようになる。この状態から流動状態であり、流速を増しても粒子の浮遊高さ(流動層高)は大きくなるが、ΔPは一定値を示す。

流動化状態では粒子層を通る気体流れの抵抗と層内全粒子の重量とがつりあっているから、

ここで、LMF:流動層高, A:断面積、Wp:粒子群の質量、εMF:空間率。

Kozeny-Carmanの式を流動化開始時について書きかえると次式となる。


ここで、f は粒子の種類によって異なる定数で150 程度の値である。これらの式から、流動化開始速度UMF は、


となる。


演習レポート 10 (方眼紙で提出)

【濾過定数の推算】ある液を操作圧 101 kPaで濾過をおこない、表のデータを得た。積分法で濾過定数K [m6/s], V0  [m3]およびケーキの比抵抗α [m/kg]を求めよ。濾過面積 A =0.04 m2, 液の固形分質量 c =26 kg/m3、粘度μ= 0.9×10-3 Pasとする。

濾液量V [×10-3 m3 ] 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
時間 t [s] 6.8 19 34 54 76 102 131
t/V              



 

 

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