逆浸透

淡水化の最小エネルギーは半透膜の思考実験から求められた。もちろんこれは理論的なものであった。ところがこの思考実験が現実化されたのである。

そのプロセスは簡単な構成であり、膜モジュールに60気圧に加圧された海水を送入することで、膜の透過側から真水を得る。逆浸透法による淡水化で消費されるエネルギーは浸透圧に打ち勝つポンプによる仕事と膜モジュール内の流動抵抗である。その必要エネルギーは8kWh/1m3真水 程度である。逆浸透法は原理的にもエネルギー的にも優れた方法であり、多くの実施例がある。
注)逆浸透法による造水コストは膜の改良,ポンプの省エネ化,エネルギー回収装置の設置などにより低下しており,1970年には12 kWh/1 m3であったが,2000年には3-4 kWh/m3, 2010年では 2 kWh/m3となっているとのこと。

逆浸透膜の作り方

夢であった逆浸透法を現実化したのが「ロエブ膜」とう非対称膜の作成法である。一般に膜分離用の膜の素材そのものはプラスチック(固体の高分子、酢酸セルロースなど)である。これを溶媒(アセトン)に溶かし(塗料のようなものである)ガラス板上に塗り広げる。その直後、溶媒の蒸発により溶液層の表面はごくうすい均質膜が形成される。これをただちに非溶媒(水)に漬ける。すると表面から浸透した非溶媒により、まだ蒸発していなかった溶媒中で高分子が固化し、スポンジ状になる。これを「相分離」という。このような方法で表面はごくうすい均質層、膜の本体は多孔質状の膜ができる。

逆浸透用の膜は当初は酢酸セルロースで作られていたが、最近はポリアミド系が主流である。

 

 

 

この方法により、孔のない膜から各種孔径の膜まで、いろいろな膜が製品化されている。逆浸透に用いるのは孔としては観察不能の程度のnmオーダーの孔の膜である。

なお、このほか多孔質膜を作成する簡単な方法として延伸法がある。フィルムを機械的に引き伸ばす加工をすることで、フィルム全体に長さ0.3μm幅0.03μm程度の大きさの揃った微細な穴をスダレ状にあけることができる。この方法によるポリプロピレンやポリエチレンの濾過膜は家庭用浄水器や水処理に多く使われている。

電気透析

水中の陰イオンのみを通す膜、逆に陽イオンのみを通す膜が開発されている。これらを交互に配置し両端から電場をかけると、供給水溶液の脱塩プロセスとすることができる。電気を用いるのでエネルギー的にはもっとも小さくてすむ。2500ppmのかん水の脱塩では4kwh/1m3真水である。残念ながら海水に適用すると逆浸透より必要エネルギーが大きいので、海水には適用されない。しかし食品分野(チーズホエーの脱塩)では多く用いられる膜分離法である。

 

 



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