日常の化学工学 
単位間違い探し

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化学工学,vol. 75, No.3 (2011)

エンジニアは毎日「単位」と格闘しています。単位換算,式の次元の確認など,面倒ですが,単位をクリアにしないと仕事が進みません。そんな「単位の専門家」の視点から身の回りをみると,天気予報などで単位の使い方がどうしても気になります。そんな例から単位について考えてみます。以下は筆者の1年生向け授業科目での単位に関する問題です。

 問題1 道路標示「」の間違いを2点指摘せよ。

解答:「1 km」。 k は小文字,数値と単位間にスペース*)
コメント:英語(半角文字圏)では常識である「数値と単位間にスペース」は,やっと教科書・専門書では普及してきましたが,一般にはまだまだですね**)。ワープロで自動改行しても数値と単位が分かれないスペース「Ctrl+Shift+Space」も覚えておきましょう。なお「℃, %」は記号とみなしてスペースは入れません。

問題2 「k(キロ)」は1000の意味の接頭語であり,単位ではないのだが,単位を省略して「キロ」で数値を言われることが多い。以下のキロにつき単位を正しく書け。
    「東京まで500キロ」
    「200キロは出し過ぎ」
    「80キロ越えた」
    「2.5キロは高すぎ」
    「50キロとは強い」

解答:順に500 km(距離),200 km/h(スピード),80 kg(質量),2.5 Kg/cm2(タイヤ空気圧),50 Kg (50 kgf) (握力)

 問題3 天気予報など気象ではミリ,センチ,メートル,キロが決まった意味で出てくるが,以下を正しく書け。
    「雨は6ミリ」
    「雪は6センチ」
    「風は39.1メートル」
    「台風は25キロ」

解答:図1を参照ください。

コメント:降雨「量」を長さの単位mmで表すのはヘンですね。もちろんこれは普通は1時間あたり地面に溜まった水の深さ[mm/h]の意味なのですが,量というなら20 L/(m2・h)(=20 mm/h)のように書くべきですね。

問題4 「1 m=100 cm」である。しかし,長さを記号で表し,各々 L [m], l  [cm]としたときは「 」である。100が1/100になるのはなぜか?

コメント:これは答えにくい問題です。筆者の解答は「両式の等号の意味が異なり,「1 m=100 cm」は実態のあるものの物理量が等しいことを表す。記号であらわしたのは単位のない単なる数値であり,「 」は数学的な等号だから。」です。このことは「実験式の単位換算」で重要になります。また,この意味からは 「L = 1 m」という書き方はおかしいのですが,筆者も(心をいためながら)使っています。

筆者の経験では中国を含む諸外国では日常でも日本より正確に単位を使っているようで,特に日本で単位の表記に不注意と言えます***)。 大きく言えば一般社会の「科学リテラシー」向上のため,専門家は正しい単位の使い方について指摘し続ける必要があるでしょう。


*)数値と単位の間にスペースは必要? - Togetter

***) 間延びする日本語の性質のためでもありますが・・(「25キロメートル毎時」→「25キロ」)

**) 高校の教科書由来の,数値の単位に括弧をつけるヘンな習慣( 10〔m/s〕 )はやっとなくなりつつあるようで,めでたいことです。(学生のレポートを直し続けて30年。)

(実教出版,化学U, H19検定済)


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