膜プロセス解析法 膜分離プロセスの構成

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伊東研


限外濾過、精密濾過による膜分離プロセスは、膜モジュールにポンプや原液タンクが付属することで構成される。その構成と運転方法は以下のように分類される。

1、回分式濃縮操作
膜モジュールと原液タンク、供給液ポンプで構成される。保持液は原液タンクに戻され、透過液は系外に取り出されるので、原液はタンク中に時間につれて濃縮される。小規模の濃縮操作に用られる。膜モジュール内の流量を大きくするため、別にポンプを設置し保持液を循環させる循環操作も多くおこなわれる。

2,全循環操作
回分式濃縮プロセスで透過液を原液タンクに戻す操作をおこなう。プロセス内の濃度が一定となるので、膜透過の基礎測定でおこなわれる操作である。洗浄、殺菌時にも使用される。

3、ダイアフィルトレーション
酵素の精製などでは回分式濃縮操作の形式で原液タンクに溶媒を加えながら濾過をおこなう。この方法により、高分子物質である酵素を原液タンクに留めながら低分子の塩類を除去できる。この操作を透析濾過(ダイアフィルトレーション)と呼ぶ。

4、連続操作(シングルパス形式)
原液をポンプにより連続的に供給し、連続的に保持液と透過液を得る形式。水の濾過などでの通常の操作法である。保持液側を止めたデッドエンド型の濾過操作もおこなわれる。回分式に比べて装置内に原液が滞留する時間が短いのが特徴である。

5,フィード・アンド・ブリード
連続操作において保持液の循環を伴う形式。多段の大規模な膜分離プロセスに適用される。

なお、膜分離プロセスでは目的成分を膜透過させ透過液側に回収する場合と、目的成分を膜で阻止して保持液側に濃縮する場合とのふたつがある。例えば同じ海水の処理でも、逆浸透法により海水から飲料水を得る場合は目的成分が水であり、透過液を飲料水として使用する回収操作となる。この場合は原液の塩分濃度3.5%は保持液において6%程度までしか濃縮されない。これに対して、電気透析法により海水から塩を得ようとする場合は目的成分が塩であり、保持液が目的の濃縮操作となる。海水中の塩分は装置出口で18%まで濃縮される。

表に各膜プロセスの特徴を必要膜面積と膜モジュール内の滞留時間とで比較した2)。回分式は膜面積は小さくて済むが、滞留時間が長い。溶液の滞留時間が長いことは特に食品において変質、細菌繁殖の問題を引き起こす可能性を生じる。通常はフィード・アンド・ブリード形式が両者の観点から最適となる。

  膜面積 処理液の滞留時間
連続操作(シングルパス)
回分式
フィード・アンド・ブリード
多段のフィード・アンド・ブリード

2) L.J. Zeman and A.L. Zydney," Microfiltration ans Ultrafiltration," Marcel Dekker, Inc.(1996)


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