膜分離工学 逆浸透法
逆浸透法は高圧により水を膜透過させることで、水と溶解している塩(イオン)を分離する膜分離法である。逆浸透法の基礎は塩の水溶液と純水間の浸透圧である。図のように、水分子を通し水中の塩は通さない膜により、海水と純水を隔てる。すると水分子だけが純水側から海水側に浸透する。この現象は純水側から海水側への圧力として観察される。これが浸透圧である。海水側にこの浸透圧に等しい圧力をかけると水の透過は止まり平衡状態となる。そしてさらに、海水側に浸透圧以上の圧力をかけることで、海水側から水のみが純水側に浸透する。これで海水から塩を除いて純水が得られたことになる。
このような半透膜は膀胱・セロファン膜など以前から知られていた。しかし実際に海水から水を得るためには、24気圧という浸透圧以上の圧力に耐え、さらに充分に大きい水透過流束が得られるような薄膜の実現が必要であった。この相反する要求に応え、1960年にロブとスリラーヤンが非対称構造の酢酸セルロース膜を開発して、逆浸透法による海水淡水化法が実現した。
逆浸透法は機械的な圧力のみを使用するので、蒸発法などの海水淡水化法比べ、本質的に省エネルギー的な分離法といえる。また、塩より大きい分子、例えばトリハロメタンのような有機物、タンパク質、糖も膜を透過しないので、これらを水から除去する目的にも適用できる。現在、逆浸透法は大型の海水淡水化装置から家庭用の浄水器まで広く普及している。また、超純水の製造用で半導体工業を支えている。医用でも注射液用の純水製造に使われている。
逆浸透法の応用例 |
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水処理分野 |
海水淡水化 |
工業分野 |
電子工業用超純水の製造 |
食品分野 |
トマトジュースの濃縮 |
製薬・医療分野 |
注射用無菌純水の製造 |
注)塩濃度と水の分類
英語 |
日本語 |
塩濃度 |
seawater |
海水 |
32,000 - 40,000ppm(3.2-4 wt%) |
brackish water |
塩水,かん水 |
2,000 - 10,000ppm |
potable water |
飲料水 |
500ppm以下 |
ultrapure water |
超純水 |
1ppb以下 |
surface water |
表流水,河川・湖沼水 |