膜分離工学 ナノ濾過

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伊東研


逆浸透膜(RO膜)のなかで、塩の阻止率は0.6以下と低いが、水透過流束が大きい種類の膜が市販されている。この種の膜は以前はルーズ逆浸透膜と呼ばれていたが、以下のように適用範囲が広がることで、現在はナノ濾過膜(NF膜)という新たな分類がされている。

最近のIUPAC の定義によると、ナノ濾過膜(NF膜)とは「2 nmより小さい程度の粒子や高分子が阻止される圧力駆動の膜分離プロセス」とされている。(なお、精密濾過(MF):>0.1μm, 限外濾過(UF):0.1μm〜2nm。)しかし一般にはNF膜とはUF膜とRO膜の中間の細孔径をもつ(細孔径1-2 nm, 分画分子量200-1000)ことに加えて、膜素材表面に荷電を持つ膜を指している。すなわちNF膜では細孔による分離(サイズ分離)と膜表面の荷電による静電気的な分離効果が組み合わされて、その膜固有の阻止性能、透過性能を示す。膜の荷電は正負あり、例えば同じメーカーでもカチオン荷電型(日東電工のNTR-7250)、アニオン荷電型(同NTR-7410)を製品化している。(多くのポリアミド系複合NF膜は製法上、マイナスの固定荷電を持つものが多い。)膜自身の荷電により、一価イオン(Na+)は通し、二価イオン(Mg2+)は阻止できるNF膜もある。また、細孔径も製造法により制御できるので、NF膜はこれら細孔と荷電の違いにより特徴のある分離性を付与することができる。

この特性により、最近の環境や食品分野の複雑な分離要求に応えるものとしてNF膜の応用が注目されている。特に欧米においてNF膜は地下水・河川水からの有機溶剤・農薬除去を目的とした浄水プロセスとして多く適用されており、大規模なNF膜プラント(例えば処理量14万m3/日)が続々と採用されている。食品工業分野では塩・アミノ酸・タンパク質の混合物の分離の要望が多いので、今後NF膜の分離特性が有効に利用されると予想されている。乳業でのホエーからの脱塩への応用、糖質混合液からオリゴ糖の分離 、アミノ酸や乳酸の分離が検討されている。

水処理分野

水の軟水化、
フミン質の除去、
トリハロメタンの除去

工業分野

重金属イオンの除去、
パルプ廃液の脱色、染料回収、
有機溶媒中の合成物質の回収

 


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