膜分離工学 透析
透析法では膜を介して原液と透析液とを接触させる。すると膜両側の溶質の濃度差によって膜を通して溶質の拡散現象が生じる。透析法はこの拡散現象を利用して原液中の低分子成分を透析液中に除去する膜分離法である。透析法では他の膜分離法と違い圧力差を使用しない。
透析法は膜分離法としては最も古いものである。1861年,グラハム*)がアルブミンで被覆した硫酸紙(トレーシングペーパー)を分離膜(半透膜)として使い ,膜を通らないものを「コロイド」と名付けた。これがコロイドという名前のはじまりである。透析法は古くからタンパク質を含む水から塩を除去する方法として使われた。現在 ,工業的には廃水中の酸やアルカリの分離に用いられている。食品分野では酒類からの脱アルコールに応用されている。また,透析器により血液から老廃物を除去する血液透析は重要な医療技術である。
透析法の応用 | |
工業分野 | 酸・アルカリの回収 |
食品分野 | 低アルコール酒の製造 |
製薬・医療分野 | 血液透析 |
*) Thomas Graham (1805-1869) :スコットランドの化学者。(「グレアム」とするのが正しいらしい。)