膜分離工学 ガス分離
ゴム風船が数日でしぼむように、孔のない高分子膜でもガスがわずかに通る。この通り易さはガス成分と高分子の組み合わせにより大きく異なる。この性質を利用して特定成分を混合ガスや蒸気から分離するのがガス・蒸気透過分離法である。高分子膜を透過させるためには供給ガスを加圧する、または透過側を減圧する必要がある。
高分子をガスが透過する速度は小さいので、ガス・蒸気透過分離法が実用化されたのは非対称膜の製法が開発された最近になってからである。
ガス分離の応用は工場での水素ガスの回収用として最初に実用化された。最近では空気中の酸素濃縮、空気からの窒素ガス発生、除湿、有機溶剤蒸気回収など各方面で実用例がある。
また、ガス分離と反応を同時におこなうものをメンブレンリアクターと呼ぶ。次世代の自動車に使われる燃料電池も、メンブレンリアクターの一種であり、ガス分 離法が応用されている例といえる。
分離対象混合ガス | 優先透過するガス | 膜 | 適用分野 |
窒素・水素混合ガス | 水素 | ポリスルホン/シリコーンゴム複合膜 ポリイミド |
アンモニア合成プロセスにおける水素回収 |
水素・炭化水素 | 水素 | パラジウム | メンブレンリアクター |
水素・炭化水素 | 水素 | ポリスルホン、ポリイミド | 石油精製における水素回収 |
ヘリウム・炭化水素 | ヘリウム | シリコーンゴム、ポリイミド | 天然ガスからのヘリウム回収 |
空気 | 酸素 | ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド | 窒素富化 |
空気 | 水蒸気 | ポリイミド | 除湿 |
空気 | 有機蒸気 | ポリイミド、シリコーンゴム | 有機蒸気の回収 |
参考リンク
除湿膜 旭硝子メンブレンドライヤー|宇部興産メンブレンドライヤー
酸素富化 ナショナル・エアコンKirei|松下電器のものづくりスピリッツ発見マガジン「isM」
脱気膜 三浦工業|大日本インキ