Web版化学プロセス集成 膜分離法2

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伊東研


電気透析:
電気透析法の代表的な応用が海水濃縮による食塩製造である。現在、国内の食塩は大部分が電気透析と多重効用蒸発を組み合わせたプロセスで製造されている。電気透析法はこのプロセスの第1段階で、3.5%の塩濃度の海水を18%濃度まで濃縮するために使用されている。

日本の塩ナイカイ塩業株式会社

小型の電気透析装置で海水の脱塩をおこなった例である。20 cm×10 cmのイオン交換膜を3 mm の間隔で60枚重ねて電気透析槽としている。これに処理液である海水と塩を取り込む廃液を供給する。電極部にはガスの発生を防ぐため別の電極液を循環させる。38 Vの直流電圧をかけると、流した電流の量に比例して脱塩がおこなわれ、供給水中の塩がなくなると電流も流れなくなる。この場合は6 Lの海水を30分で飲料水にすることがでた。


透析:
透析法の応用は大部分が医療における血液透析での利用である。血液透析は慢性腎不全患者の治療法として広く利用されている。日本の医療費30兆円のうち透析治療が1兆円を占めている。分離膜の市場全体でも75%が医療分野であり、その大部分が透析膜モジュールである。透析膜モジュール(ダイアライザー)により血液中の老廃物のみを除去することができる。ダイアライザー内で血液と透析液を接触させると血液中の大きいタンパク質や血球などは透析膜を透過できない。一方、血液中の老廃物である尿素や塩類は濃度差に従って血液側から透析液側に透過する。さらに、実際には透析液の成分を調整するこことにより必要成分を血液に補給することもおこなわれる。現在、血液透析膜の装置は再使用はされず、一回の使用で廃棄されている。

 


パーベーパレーション法:
パーベーパレーション法は供給液を膜を介して蒸発させ、その際、膜の分離機能により特定成分のみ分離・回収する膜プロセスである。パーベーパレーション膜分離プラントの例を示す。これはゼオライト膜による水溶液の脱水に使用される装置である。(三井造船)管状のゼオライト膜のモジュールを真空容器に設置して、容器内を真空に保つ。供給液は気化熱で冷却されるので、それを補う供給液の加熱部分と、真空システム、および透過蒸気を冷却し回収する部分が付属する。この装置をイソプロピルアルコールの脱水処理用に適用した場合、480 kg/h の処理量で、原液アルコール濃度 90 wt% を 99.8 wt%まで濃縮している。


ガス分離:
ガス分離膜による分離プロセスのとして、宇部興産によるポリイミド製中空糸膜モジュールで構成された水素分離プロセスを紹介する。石油精製プラントにおけるナフサ分解装置から発生するガスから水素を回収している。プロセスは2段で構成され、各段とも多数の膜分離器から構成されている。供給するガスは水素73%, メタンなどの炭化水素27%で、これを操作温度50 ℃、圧力差約20気圧で膜透過させる。透過側に出るガスの割合は67%で、透過ガスとして純度98%の水素が得られる。プロセス全体として90%以上の水素回収率が達成される。

ナショナル・エアコンKirei|松下電器のものづくりスピリッツ発見マガジン「isM」


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