Web版 化学プロセス集成 かん水からのヨウ素製造

 

千葉県,新潟県で産する水溶性天然ガス付随水(かん水*))には高濃度のヨウ素が溶存している。(20〜100 ppm)日本のヨウ素生産**)は全てこれを回収したものである。ここでは新潟県新潟市にある東邦アーステック(株)黒 埼事業所のヨウ素製造プロセスを工程を追って紹介する。この全工程はブローイングアウト法と呼ばれる。

曝気・濾過工程:深さ500 m〜1000 mの井戸(50箇所余り)から取水したかん水は曝気槽で鉄分を沈殿させる。

放散工程:濾過器を通した原水は酸化剤が加えられ,ヨウ素イオン(I-)は遊離ヨウ素I2となる。これを放散塔内に散布して,下部から吹き込む大量の空気中にヨウ素を放散させる。処理後の原水は圧入井戸から地下へ戻される。

吸収工程:放散塔を出た空気は吸収塔へ送られ,ガス状ヨウ素を還元剤を含む水溶液中に吸収させる。この吸収液中にヨウ素はイオンとして9%まで濃縮される。原水からは 約 2,400 倍の濃縮度である。

晶析・精製工程:晶析反応槽で吸収液に酸化剤を添加して再度ヨウ素イオンをヨウ素にする。これによりヨウ素の結晶が析出する。ヨウ素の結晶を溶融釜で溶解して,純度を上げる。このヨウ素の 溶融液をフレーカーで急冷固化して製品ヨウ素となる。

以上のプロセスで,この工場ではヨウ素濃度35 ppm濃度のかん水を 60,000 ton/day 処理することで, 1,400 kg/dayのヨウ素を生産している。

 


注)

*)一般に真水に対して海水濃度までの低濃度塩分を含む水を かん水 と呼ぶ。英語のbrackish waterも同じ意味である。ここでは塩分を含む地下水を かん水 と呼んでいる。なお食品(ラーメン)に使われるアルカリ塩水溶液のことも かん水 と言う。さらに食塩製造工業では海水を濃縮した18〜20wt%塩水を かん水 と呼んでいる

**) 近年まで日本は世界最大のヨウ素の生産・輸出国であったが,最近はチリに次ぐ生産国となっている。2010年ではヨウ素の世界の生産量は28,700 tonであり,そのうちチリが61%,日本が32%,米国が6%である。約9,300 tonの日本の生産量では千葉県が78%,宮崎県が12%,新潟県が10%である。


リンク  国内ヨウ素メーカー:
合同資源産業
関東天然瓦斯開発
日宝化学
伊勢化学


参考資料:清水 博監修:吸着技術ハンドブック, p. 661, エヌ・ティー・エス (1993).


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