Web版 化学プロセス集成
海水淡水化−限外濾過と逆浸透法による膜濾過プロセス-

 

海水を飲料水にすることは ,塩と水を分離する操作である。塩と水の分離には水を蒸発させ,蒸発水蒸気を凝縮させる方法が簡単であるが,これには得られる純水の蒸発潜熱分のエネルギーが必要で,純水1 m3あたり2250 MJのエネルギーとなる。これに対して膜を用いた逆浸透法では,使用エネルギーがポンプによる圧力発生の機械的動力だけなので,純水1 m3あたり29 MJと,使用エネルギーが大幅に(1/78)小さい。このため現在海水から飲料水を作る海水淡水化は,逆浸透膜による方法が普通である。(熱エネルギーが得られる場合はフラッシュ蒸留法が有利である。)

渇水が頻発していた福岡都市圏は,平成17年にこの逆浸透膜法による海水淡水化施設を設置した。この施設により,1日あたり50,000 m3の飲料水(福岡 都市圏25万人分の生活用水に相当)が供給可能となった。

ビデオ資料(海の中道奈多 海水淡水化センター(福岡地区水道企業団))

海底の砂中から採取された海水は限外濾過膜で微生物や極細微粒子まで除去する。限外濾過膜の素材はPVDF,分画分子量は15万 g/mol,スパイラル膜モジュールで,濾過圧力は 0.15 MPaである。限外濾過は全量濾過であり,定期的に膜装置を洗浄する。保安フィルタを通して,pH調整などをおこない,海水を高圧ポンプにより 約 8.2 MPaまで加圧して逆浸透膜ユニットに送る。逆浸透膜は三酢酸セルロース製の中空糸(内径 0.07 mm, 外径 0.14 mm)型で,この膜を透過した水は海水中の塩分(3.5%, 35,000ppm)が除去され,飲料水として適した500ppm以下の塩分濃度の水となる。この施設では最終段に低圧逆浸透膜ユニット(スパイラル膜モジュール ,ポリアミド複合膜)を設置して,ホウ素などの微量成分をさらに除去している。プロセス全体の水回収率(取水海水のうち飲料水になる割合)は約 60%である。

謝辞:取材,公開許可いただいた福岡地区水道企業団,福岡地区水道企業団海水淡水化センター(まみずピア) に感謝申し上げます


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