Web版 化学プロセス集成
ポリエチレン

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ナフサを分解して作られたエチレン,プロピレンを重合して,プラスチックであるポリエチレン,ポリプロピレンが作られる。

ポリエチレンは先ず(1933-)イギリスICI社の開発した,気相の高圧法(2400気圧、140-250℃)で製造された。これを高圧法低密度(0.91-0.93 g/cm3)ポリエチレン(LDPE)とよぶ。この方法は現在も使われている。

しかし1954年ごろチーグラー(独)が,溶媒中で10気圧以下の圧力でポリエチレンを合成するプロセスを発明し,ポリエチレン製造法を革新した。低圧法と呼ばれるこの合成法は有機化学の最大の成果のひとつである。 チーグラーは類似の触媒でポリプロピレンの重合法を開発したナッタとともに1963 年のノーベル化学賞を受賞した。

低圧法は有機金属という新しい触媒の開発からうまれた。溶媒(完全に無水のキシレンなど)中で4塩化チタン(TiCl4)とトリエチルアルミニウム((C2H5)3Al)により触媒(遷移金属触媒,チーグラー触媒)を調整する。10気圧、60-80℃の条件でこの溶媒にエチレンを吹き込むとポリエチレンの重合体が生成・沈殿してくる。この溶液にアルコールを添加して触媒を分解したのち、溶媒除去、水洗・乾燥でポリエチレンの粉末ができる。この方法で得られるポリエチレンは分岐のほとんどない高密度(>0.93 g/cm3)のポリエチレン(HDPE)である。

低圧法ポリエチレン合成プロセスは画期的なものであり,溶媒中の反応による多数のプラントが建設・稼動した。しかし化学プロセスは常に競争にさらされている。このプロセスは触媒の活性を上げることで触媒の使用量を減らし、触媒除去の工程を無くした。するとそこまで触媒の活性があがると気相でも合成反応ができることがわかったのである。1968年以降は気相重合触媒の開発と流動層技術の進歩により,気相重合法が現在のポリエチレン製造プロセスの主役となっている。同様の製法がプロピレンからポリプロピレンを作るのにも用いられる。

低密度ポリエチレンは柔らかく,主にフィルム(ポリ袋)に用いられる。高密度ポリエチレンは固いので,ポリタンクのような容器に用いられる。

ここでは日本ポリエチレン社(鹿島)の気相法ポリエチレン製造プロセスを紹介する。

エチレンガスの重合反応は巨大な重合器中で気相でおこなわれる。重合器の条件は温度75〜100℃,圧力は約20気圧である。重合器はエチレンガスの循環系を成し,エチレンは外部のガス循環機により重合器中を大量に循環している。循環系には反応熱を除去する冷却器も付属する。原料エチレンは製品抜き出し量の分が循環系に補給される。

重合器に触媒粒子を投入することで,触媒粒子まわりにポリエチレンが生成する。生成粒子は自ずと割れて小粒子となり,それがまた次々と粒子成長する過程を繰り返す。この過程で触媒1 gあたり3000 g以上のポリエチレンを生成し,触媒粒子は初期80 μm径が最終的に0.05〜0.1μm径にまで分裂し,ポリエチレン中に分散状態となる。このため投入した触媒はそのまま製品中に残しておくことができ,回収する必要がない。

生成ポリエチレン粒子は重合槽中で上向きのエチレンガス流れにより,分散板上で流動化し,槽の上部で径が広がる部分まで達し,流動層を形成する。その結果重合器中で約1mm程度のポリエチレン粒子が得られる。この間原料の平均滞留時間は3〜5時間である。生成ポリエチレン粒子は流動層底部から連続的に抜き出され,脱ガス塔を経て押出機によりペレット状に加工されて製品となる。 なお,このプロセスでは重合成分の調整により低密度ポリエチレンを製造している。


参考資料
松浦一雄・三上尚孝編著:ポリエチレン技術読本,工業調査会(2001)


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