Web版 化学プロセス集成 硫酸

 


硫酸は各種化学工業の基礎薬品である。日本では660万トン(H21)程度製造されている。(中国は2400万トン)原料別では製錬ガス(非鉄金属製錬工程で発生するSO2)が77%, 硫黄からが23%である。ここでは硫黄燃焼式(接触法*)による日本燐酸株式会社(千葉県袖ヶ浦市)の硫酸プラントを紹介する。

 ビデオ 硫酸プロセス(日本燐酸(株))

原料は石油精製プロセスにおける脱硫操作で回収された硫黄である。製油所からタンカーやタンクローリーで運ばれ,溶融状態(130℃)でタンク貯蔵される。 プロセスは3工程から成る。
第1段: 燃焼炉で溶融硫黄を乾燥空気(プロセス中の濃硫酸で乾燥)中で燃焼する。

    S(g)+O2(g)→SO2(g) ΔHc0 = -296.8 kJ

燃焼ガスは11%のSO2と10%のO2となるよう調節されている。このとき,燃焼ガス温度が1150℃となるため, この熱を廃熱ボイラーで熱回収する。
第2段: 触媒反応器(転化器,コンバーター)で燃焼ガス中のO2でSO2を酸化し,SO3にする。

    SO2(g) + (1/2)O2 →SO3(g)  ΔHc0 = -98.9 kJ

これも発熱反応であり,触媒層を5段に分け,段毎に最適な温度(420℃から600℃)まで上がったら,これを各段で熱回収し,所定の入口温度(約400℃前後)に戻して次段の触媒層に送入する。最終は99.8%の転化率。触媒はシリカ坦体にV2O5を坦持し たバナジウム触媒。雛菊型と呼ばれる形状で圧力損失の低減がなされる。
第3段: 触媒3層目から92-95%転化のガスを抜き出し,第1吸収塔でSO3を濃硫酸に吸収させる。未反応SO2が触媒層に戻される。 また,最終 触媒層出口ガスを第2吸収塔に送入する。各吸収塔ではSO3が98%硫酸に吸収され,99%硫酸となる。これに希釈水を加えて98%硫酸の製品として工程より取り出す。 第2吸収塔からの排ガス(数百ppmSOx + 94% N2 + 6% O2)は排ガス処理設備で処理される。

各反応は発熱反応であり,硫酸 1 tonに対してほぼ同量のスチーム発生で,熱回収がおこなわれる。スチームは 空気ブロワー駆動用タービンの動力源に使用された後、各所の熱源や自家発電(6000 kW)に使われる。このプロセスで1350 ton/day(47万トン/年)の硫酸を製造する。

注:*) 接触法 contact process とはSO2ガスを触媒に接触させてSO3に転化することを意味する。1831年のPhillipsによる特許。


参考資料:
化学便覧 応用化学編,工業プロセス編 p. 150
三井造船技報, No. 200 (2010-6) p. 41
Shreve and Brink: "Chemical Process Industries" p. 296, McGraw Hill (1977)


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