Web版 化学プロセス集成
メタノールプロセス

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伊東研


メタノールは「木精(wood spirit)」といわれるように合成法以前は木材の乾留で得られる木酢中から生産された。

BASF社のMittasch, Schneiderらは1913年に水性ガス(コークスから得られる)を100-120 atm, 300〜 400℃の金属酸化物触媒に通すことによりメタノールを合成し、特許を得た。 1923年,BASFはLenuaに3,000 t/年の工場を建設して工業的製造を始めた。 日本では1932年下関の彦島に最初のメタノール工場が建設された。 その2年後に江戸川工業所(現三菱ガス化学)はドイツのIG法による メタノールの製造を開始した。戦後は天然ガス原料に工程が移り, 1952年日本瓦斯化学(現三菱ガス化学)が新潟で天然ガスからの メタノール製造に成功した。1962年、協和瓦斯化学は新潟・中条でアセチレンオフガスがらのメタノール工場を建設した。

ここではその新潟県産の天然ガスを 原料とするプロセス(三菱ガス化学新潟工場)を紹介する。'75年に運転開始、日量600トンの生産能力。

このプラントは、1997年11月に中国内モンゴル自治区内蒙古伊克昭盟化工集団総公司に売却され、解体・輸送 され,2002年に現地で再稼働した。このような巨大なプラントが中古としてそっくり移築・再使用されるのはきわめて珍しい。なおこのプラントは国内で最後に現存したメタノール製造プラントであった。

メタノールは以下の工程で製造される。

ビデオ資料

[水蒸気改質] 天然ガス(メタン)は水蒸気およびCO2と混合され、改質炉で水性ガスに改質される。
 CH42CO+32  ΔH =206kJ(吸熱)
 CH4+22CO2+42  ΔH =165kJ(吸熱)
(750℃,23気圧、Ni系触媒)
出口ガスは原料CH4  1molあたりCO 0.74mol, CO2 0.29mol, 2 3.29mol,  2 2.0molの組成。メタノール合成に必要な組成は量論的には H2:CO=2:1である。

[合成工程] 原料ガスを遠心式圧縮機により 200-300気圧に加圧し、250-400℃の触媒層(触媒:Cu-Zn-Cr系触媒 )を通すことで合成反応をおこなう。一回通過転化率0.67。
 CO+22CH3OH  ΔH =-100kJ(発熱)
 CO2+32CH3OH2  ΔH =-58kJ(発熱)
発熱反応であるため、反応ガスの一部を循環して反応温度を300℃前後に制御する。生成物を冷却回収し、ガスは一部をパージし、残りは循環される。リサイクル比は4-6。

合成反応 CO+22CH3OH  の理論転化率は下図のようである。

 

[精製工程] 合成工程の生成混合物 メタノール77%,水22%,微量のエタノールと 副生成物を2塔の蒸留塔で分離精製する。


東洋エンジニアリング樺供 メタノールプラント資料


参考資料

化学工学協会編、化学プロセス集成、丸善(1982)

野沢・橋本:プロセスシリーズ メタノール、化学工学、vol. 46, p. 507 (1982)

三菱ガス化学 メタノール技術


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