物質移動流束と拡散流束

 A,B 2成分系での(気液)界面Sを通しての物質移動流束 NA, NB[kg/(m2・s)]は一般に拡散流束 JA,JB[kg/(m2・s)] と界面に垂直方向の流体の速度   vs[m/s](バルクフロー)(以下「界面速度」)により運ばれるその成分の流束との和である。

(ρ:流体密度[kg/m3],ωAs:界面における(気相の)着目成分Aの質量分率[-])
気相の拡散流束は界面濃度勾配と気相相互拡散係数DABにより

である。vs=0 の場合には,

これを平板の全長Lについて平均すると,

境界層理論によればJAの値はvsにより影響を受ける。すなわちvs<0では境界層が薄くなり濃度勾配が大きくなりJAが増加する。その関係は,数値計算の結果を相関すれば上式の0.332Sc1/3

に置き換えることであらわせる(Rose 1979) 。ただし,Bは Blowing Parameter :

である.この式は複雑ではあるが,吹き出しなら係数0.332が減少し,吸い込みなら増加することを相関しているだけである.

 物質移動では普通はモル基準で取り扱われる。しかし界面速度を考慮する場合にはモル基準平均速度が計算しにくいので質量基準での取り扱いが簡明である。vsは界面における流体の「吹き出し速度(vs>0)」または「吸い込み速度(vs<0)」そのものである。

 なお,通常の取り扱いでは「拡散支配」として物質移動流束と拡散流束は同一に扱う(NA=JA)。vsを考慮する必要がある場合は特別な場合であると言える。

 vsが関与する代表例は一方拡散である。水表面からの蒸発のようにB成分(空気)が静止している場合にあたり,NB=0 の条件から,

となる.すなわち、2成分系の一方拡散では物質移動流束と拡散流束は同一ではなく,NAJAの1/(1-ωAs)倍になっている.

段接触操作の境界層モデル

 段接触の2成分系蒸留では通常「理論段」(理想段)の仮定がもちいられて,蒸留計算に使用される.これは段を去る蒸気の濃度y1が段を去る液の濃度x1に平衡であると仮定する.(x,yは各々気・液の低沸点成分のモル分率)

 もちろん段上での気液の接触時間はごく短いから、実際の操作ではこの仮定は近似にすぎない。理論段の仮定が成立しない場合は,理論段からのズレをマーフリー段効率:

で表わす.y1*はx1に平衡な濃度である.

 いま全還流を考えてy1=x0 とした扱いについて,図のような平板型濡れ壁塔による物質移動モデルを考えて,vsの影響をシミュレートしてみる.

計算手順

@モデル形状

A物性値 

B分縮率 P の設定

C操作条件の計算

D塔内平均濃度y,xの計算

E物質移動流束の計算

F段効率

レポート

EQUATRQN-M での記述

1:/*1 */ (注釈行)
2:G=1 ;L=0.3 ; H=0.02
3:/*2 */
4:MA=46.07 ; MB=18.02
5:DAB=1.6e-5 ;MU=1.1e-5 ;RO=0.803
6:/*3 */
7:P= 0.02; P=(1-G1/G2)
8:/*4 */
9:G2=0.0011 ;y2=0.2
10:u=G2/RO/G/H ; Re=RO*L*u/MU ;Sc=MU/RO/DAB
11:vs=(G1-G2)/RO/G/L
   

というようにテキストの式をそのまま書いてゆく.大文字・小文字は区別されるので注意. 注: 必要な変数だけ出力するには

26:output y1,y2,NA,NB,JA,EMV

とする

注意:(1-2B)>0でしか計算できないのでBの値に注意してください


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