多数の分離ユニットから構成される分離プロセス。各分離ユニットの組成変化は離散的であり,プロセス全体は(非線形)連立方程式で記述,解析される。?
内部の濃度分布は無視して,完全混合および相平衡が成立すると仮定。(理論段,Theoretical Stage)
・理論段の仮定は接触時間が有限なので実際には成立しない。(yn≠y*n(xnに平衡な組成))理論段と実際の段の差を表すのが段効率。?
これより,NOGが小さいほど段効率は1に近付く。
向流多段プロセスと微分接触操作をx−y図上で比べると両者には相似性がある。そこで両者を対応づけるものとして1理論段相当高さHETP( Height equivalent to a theoretical plate) があり,
で定義される。HETPは充填物の性能を表すのにもちいられ,また,吸着操作,クロマト分離の解析に用いられる。
【問題】向流3段の気液接触装置で吸収をおこなう。気液平衡関係は y= mx で表せる。気体流量G、液流量Lは一定とし,各段では理論段の仮定が成立するとする。吸収成分の気体中モル分率y,液体中モル分率xの各段出口の濃度の定義を図に示す。G,L,出口液濃度x1,供給ガス濃度y0が既知のとき,その 他の濃度x2,x3,x4,y1,y2,y3を求める連立方程式を書きなさい。?
【解】理論段の仮定と平衡関係より,
y3=mx3 @,
y2=mx2 A,
y1=mx1 B?
各段の物質収支:
これらより以下の連立方程式を解く。
蒸留計算法はプロセスエンジニアリングのなかで最も重要で困難なもののひとつである。定式化は簡単なのであるが大規模な連立方程式を解く問題となるため、解法プログラムの作成に多大な努力が成されている。
蒸留計算法は設計と操作の2つの目的がある
・設計型問題:目標とする分離(製品濃度)をおこなうための理論段の数を求める.理論段の数は整数ではない.McCabe-Thiele図式解法は設計型問題の解法。
・操作型問題:段数を与えて塔の両端の濃度を求める.各理論段毎の物質収支および平衡関係の連立非線形方程式を解く問題となる.実用の計算はこの方法でおこなわれる.このとき段数は数10段にもなるのでこの大規模な連立方程式の解をいかにして得るかがポイントとなる.
【例題】 理論段の数8(段数7+リボイラ)の蒸留塔で相対揮発度α=2.4 の2成分系混合物を分離する。F=1 ,供給組成zF=0.5, q= 0.5 ,D=0.5とした場合,還流比Rを変化させて塔の分離性能を操作型の問題として解く.
【解】
@塔頂全縮器まわり物質収支:
A濃縮部:?
B第5段,フィード段:?
C回収部:
Dリボイラ:?
E全理想段について気液平衡関係:
以上をEQUATRRAN-M で書くと以下のよう.
/*2成分系蒸留塔 逐次段計算 "DIST_TBT.eqs"
*/?
var x(8) , y(9)?
/*操作条件*/?
F=1 ;zF=0.5 ;q=0.5?
D=0.5; W=F-D ; R=50?
/*段収支*/?
xD=x(1) ; x(1)=y(2)?
L=R*D ; V=L+D?
L*x(1:3)+V*y(3:5)=L*x(2:4)+V*y(2:4)?
LD=L+q*F ; VD=V-(1-q)*F?
L*x(4)+VD*y(6)+F*zF =V*y(5)+LD*x(5)?
LD*x(5:7)+VD*y(7:9)=LD*x(6:8)+VD*y(6:8)?
LD*x(8)=VD*y(9)+W*xW?
/*平衡関係*/?
a=2.4?
y(2:8)=a*x(2:8)/(1+(a-1)*x(2:8))?
y(9)=a*xW/(1+(a-1)*xW)
この程度でも収束しにくい計算となるので,実際の計算にあたってはコマンド>default で計算条件を 初期値 0.5, 上限値 1, 下限値 0 , 収束精度 0.002, 打ち切り回数 5000 にする等の工夫をしてください.1回で出なくてももう一度その値を使用して>G で再計算してみてください.?
レポート課題
上記の2成分系蒸留塔の問題について,
課題 1 適当な条件における塔内組成分布を x, y
対各段,および x-y 線図上に例示する.?
課題 2 1/Rと xD, xWの関係を図示する.?
課題 3 蒸留塔は駆動力はリボイラに投入される熱エネルギである.蒸留はこの熱エネルギにより原料のエントロピーを減少させ,純度を高めた製品とする装置である.(製品が原料の持つエネルギ以上を含むわけではない.)リボイラに投入される熱エネルギ(V'はこれに比例する.)の価格がその量に比例するとして,純度xD=0.90の製品と純度xD=0.95の製品ではコストが何倍か?.?