段接触プロセス2 抽出

 分離剤を用いる平衡段分離

  液−液抽出装置の代表的形式は右図のようなミキサー−セトラー型抽出装置である.攪拌機つきの混合槽(Mixer)と沈降分離槽(Settler)を組み合わせて一組としたものである.これを分離ユニットとしてみると,2成分系混合物にもう1成分を加えて,3成分系とすることで平衡関係を利用してもとの2成分系の組成を変えている.この第3成分を「分離剤」と呼ぶ.

抽出における分離ユニット

 3成分系の液−液平衡関係は3角図上で表わす.頂点 A,B,C は各々原溶媒,抽剤,抽質の純成分である.図上では抽剤濃度xBと抽質濃度xCでプロットし,xAxA=1-xB-xC で計算する.抽出に用いられる3成分系は2相に分かれるが,それが溶解度曲線で,分かれた2相の組成はタイラインで表わせる.

原料と抽質の混合物F+S [kg]の組成がM 点であったとすると,この混合物はセトラーにてM点を通るタイライン上のR 点とE 点の濃度の2相に分かれる.「てこの規則」により2相の割合は図上の線分R-EM 点で分けた比R-M: M-E =E [kg]:R [kg]となる.

向流多段抽出

【例題】 エタノール(C)/水(A)/エチルエーテル(B) 間の液液平衡は表のようになっている.

3個の分離ユニットにより(25+(学籍番号下1桁))wt%のエタノール水溶液 0.05kg/s をエチルエーテルによって向流多段抽出する.エチルエーテル 0.1 kg/s を使用するものとして,各段の組成を求める.図式解法と計算による解法を比較しなさい.それぞれ三角図上に表わしなさい.(図式解法は非線形の連立方程式を解く巧妙な方法であることが理解されることでしょう。よくこんなことを考えたものだ!でもこのような図式解法は高校で学んだ「方程式とグラフ」の応用です。この受験勉強が実用上の役に立つのは広い工学分野のなかで化学工学だけかもしれない。

【図式解法の手順】

@方眼紙に平衡関係をプロットする

A F-M:M-B=S:F=0.1:0.05 に内分する点としてM点を決める.

B R3点を仮定

C R3-Mを延長してE1点を決める.物質収支より,
F-E1=R1-E2=R2-E3=R3-S=O
の関係がある.この式は線分F-E1,R1-E2,R2-E3,R3-S の延長線がすべて同一点Oで交わることを意味する.このOを操作点という.
線分F-E1,R3-S を延長した交点としてO点を決める.

D E1からタイラインによりR1を決める.

E R1OからE2を決める.

F E2からタイラインによりR2を決める.

G R2OからE3を決める.

H タイラインによりR3を求める.

I R3がはじめに仮定したR3に一致するまでBまでの手順を繰り返す.

【連立方程式の直接解法】

 計算による方法では各段の物質収支と平衡関係を連立させて解く.

例えば第1段では
全体の物質収支: F+E2=E1+R1
エタノール収支: FxCF+E2xCE2 =R1xCR1+E1xCE1
水収支: F(1-xCF)+E2xAE2 =R1xAR1+E1xAE1
平衡関係:タイラインの位置y1を変数として,点(xCE1,xAE1),(xCR1,xAR1)が溶解度曲線上にあること.
これを2,3段にも書いて連立させて解く.

EQUATRAN-M による記述

/*エタノールー水ーエチルエーテル 液液多段抽出 "EXTRAC2" */
VAR C(6), L(13), x(13,6)
TABLE x=data(L,C) REV
C=(1,2,3,4,5,6)
L=(0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12)
x=( 0.000, 0.940, 0.060, 0.000, 0.013, 0.987 )..
( 0.067, 0.871, 0.062, 0.029, 0.021, 0.950 )..
( 0.125, 0.806, 0.069, 0.067, 0.033, 0.900 )..
( 0.159, 0.763, 0.078, 0.102, 0.048, 0.850 )..
( 0.186, 0.726, 0.088, 0.136, 0.064, 0.800 )..
( 0.204, 0.700, 0.096, 0.168, 0.082, 0.750 )..
( 0.219, 0.675, 0.106, 0.196, 0.104, 0.700 )..
( 0.231, 0.650, 0.119, 0.220, 0.130, 0.650 )..
( 0.242, 0.625, 0.133, 0.241, 0.159, 0.600 )..
( 0.256, 0.590, 0.154, 0.257, 0.193, 0.550 )..
( 0.265, 0.552, 0.183, 0.269, 0.231, 0.500 )..
( 0.274, 0.515, 0.211, 0.278, 0.272, 0.450 )..
( 0.280, 0.470, 0.250, 0.282, 0.318, 0.400 )
F=0.05 ; xCF=(指定) ; S=0.1

F+E2=E1+R1
H1: F*xCF+E2*xCE2 = R1*xCR1+E1*xCE1
F*(1-xCF)+E2*xAE2 = R1*xAR1+E1*xAE1
xCE1=data(y1,4) ;xAE1=data(y1,5)
xCR1=data(y1,1) ;xAR1=data(y1,2)
RESET y1 #4 [0,10] by H1

R1+E3=E2+R2
H2: R1*xCR1+E3*xCE3 =..
R2*xCR2+E2*xCE2
R1*xAR1+E3*xAE3 = R2*xAR2+E2*xAE2
xCE2=data(y2,4) ;xAE2=data(y2,5)
xCR2=data(y2,1) ;xAR2=data(y2,2)
RESET y2 #2 [0, 5] by H2

R2+S =E3+R3
H3: R2*xCR2 = R3*xCR3+E3*xCE3
R2*xAR2 = R3*xAR3+E3*xAE3
xCE3=data(y3,4) ;xAE3=data(y3,5)
xCR3=data(y3,1) ;xAR3=data(y3,2)
RESET y3 #1 [0, 3] by H3


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