微分プロセスとは一段の分離ユニットについて内部の変化を考慮して解析する方法であり、前節までの平衡段プロセスと対比させた見方である。段プロセスの解析では平衡関係が分離を支配したが,微分プロセスではさえぎり面両側の推進力(Driving Force,平衡関係)と移動速度が関係する。
さえぎり面を介した2つの流れの相は、吸収のように異なる場合,気体膜分離のように同じ場合もある。さえぎり面はその代表が境膜である。境膜は移動操作を解析するためのモデルに由来するもので仮想的なものである。実体のあるものとして高分子膜,液体膜がある。物質移動を生じさせる推進力には濃度差,圧力差等がある。また,熱交換器も固体壁を通して,2つの流体間の温度差をDriving Forceとして熱の移動をおこなうものであるからおなじ観点からとらえられる。(正確には伝熱の解析法を物質移動に応用したもの。)
完全混合 容器内は均一濃度で,出口濃度に等しい。
押し出し流れ,プラグフロー 流れに直角方向に濃度が均一,流れ方向に混合無し。
実際の流れは混合が存在して,両者の中間。完全混合からこれを表すのが槽列モデル,プラグフローからの偏奇を表すのが混合拡散モデル
膜モジュールにより空気の脱湿をおこなう.図のように「供給側プラグフロー−透過側完全混合モデル」を用い,膜モジュールまわりの流量F,流れ中の水蒸気濃度xを定義する。
膜面の微小面積dAにおける透過の基礎式は,
−dFx=(Q1PhdA/δ)(x−γxp)
−dF(1−x)=(Q2PhdA/δ)((1−x)−γ(1−xp))
ここで,F:流量(空気+水蒸気)[cm3(STP)/s]
x:水蒸気濃度[mole fraction]
Q1:水蒸気透過係数[cm3(STP)・cm/(cm2・s・cmHg)]
Q2:乾燥空気透過係数
Ph:供給側圧力(大気圧)[cmHg]
Pl:透過側圧力
A: 膜面積[cm2]
δ:膜厚み[cm]
γ:圧力比(=Pl/Ph)
これを各成分流量F1:水蒸気,F2:空気 になおして,これらを表す微分方程式が次式となる。
−dF1/dA=(Q1Ph/δ)(x−γxp)
−dF2/dA=(Q2Ph/δ)((1−x)−γ(1−xp))
x=F1/(F1+F2)
Q1,Q2を仮定して,Ff,xfを初期値として,Aまで積分すると,出口でのF,xが求められる.
【例題】膜厚みδ=0.0008cm, 膜面積A=24.5cm2, の膜モジュールで,Ff=0.5cm3(STP)/s, Ph=76cmHg, γ= 0.10 ,カット(=Fp/Ff)が0.5 の条件で操作する.供給側入口空気の露点が -1*(学籍番号下1桁)℃,供給側出口空気の露点がそれより 10℃下がったとき,この膜の水蒸気および空気の透過係数Q1,Q2 および分離係数α(=Q1/Q2 )を求めよ.
空気の露点td [℃]と空気中の水蒸気分圧p*
[kPa] との関係は,
logp* =A-B/(C+td)
ただし A=7.4995, B=1885.5, C=244.434
である.空気中の水蒸気濃度 x は x=p*/101.3kPa
である.
【解】EQUATRANでの記述は以下のよう。Q2,alphaを仮定し,Cut,xoが実験に合うように試行して、解を求める.
1:/* 二成分系膜透過
供給側プラグフロー透過側完全混合 */
2:input Q2,alpha
3:/* 実験条件 */
4:Ph=76
5:gamma=0.15
6:A=24.5; l=0.0008
7:Ff=0.5 ; xf=0.00415 ; xo1=0.001887 (各自変更)
8: Cut1=0.5
9: Ff*xf=Ff*(1-Cut1)*xo1+Ff*Cut1*xp
10:/*透過係数の仮定*/
11:Q1=Q2*alpha
12:/* 微分方程式 */
13: -F1' = (Q1*Ph/l)*( x-gamma*xp)
14: -F2' = (Q2*Ph/l)*((1-x)-gamma*(1-xp))
15: x=F1/(F1+F2)
16:INTEGRAL a[0,A] step 0.2
17:trend F1+F2,x step 2
18:/* 入口条件 */
19: x # xf
20: F1 # Ff*xf
21: F2 # Ff*(1-xf)
22:/*output */
23:Fo=F1 +F2 ; xo=F1 /(F1 +F2 )
24:Fp=Ff-Fo ; Cut=Fp/Ff
28:output Cut,xo,Fp,Q1,Q2,alpha
(繰り返し計算のコマンドは>G)