日常の化学工学 
 ハーは暖かくフーは冷たいのはなぜ−流体の混合のはなし−

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 化学工学,Vol. 73, No. 7,  349 (2009)

寒いとき手にハー」と吹きかける時の息は暖かく,熱いものを冷ますときには「フー」と冷たい息を吹きかけます。口の開け具合でどうして息の温度が違うのでしょう?

実際にサーモグラフィー(熱映像カメラ)で手のひらの温度を測定しました。25°Cの空気中では手の表面温度は32.3°Cでしたが,36°Cの空気(息)をかけると33.6°Cに上がり,「暖かく」感じます。同じ36°Cの空気を今度は細い管で強くあてると逆に手の表面温度は30.8°Cに下がってしまいます。これは息を「フー」と強くあてると,冷たく感じることに相当します。

このことよりフーとハーで「息の温度が違う」のではなく,息の温度は同じ36℃でもフーとハーでてのひらで感じる温度(体感温度)が異なるとのだ,いうことがわかります。

下図はこのことを流体シミュレーション(CFD)で確認したものです。このシリーズの体感温度の皮膚表面温度モデルを用います。皮膚を厚さ4 mmの膜として,体内側の面は体温の36℃で一定です。この皮膚面に息を2 L/minの流量で当てるとして,φ0.6 cmの細い口またはφ4 cmの円筒から36℃空気流が3 cm離れた壁上にあたる様子を数値シミュレーションします。外気および壁の温度は10℃としています。 「ハー」のほうは流速が1/44のため,皮膚面でスムーズに広がって流れています。これに対して「フー」のほうは噴流の衝突により壁面で渦が生じ ,10℃の外気を内側に巻き込んで流れています。これにより皮膚面上空気中の温度勾配が大きく,これに従って皮膚境膜内にも温度勾配が生じます。皮膚面温度は33.8℃に下がっています。よって「フー」は冷たく感じる訳です。

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 以上より「フー」が冷たく感じるのは,@噴流による渦の効果でてのひら上の空気温度が周囲温度に近く,低くなることと,Aこれによる空気中の温度勾配が皮膚内温度にも影響を及ぼし,皮膚面温度が低下することによるものと説明できます。


> 朝日新聞 2015/6/6 ののちゃんのDo科学 「フーフーするとなぜ冷める?」

Why is "Hoo" cool and "Haa" warm - YouTube


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